楽BOOKS  魂 (ソウル) のゆくえ / ピーター・バラカン
2008 / 08 / 31 ( Sun )
barakann.jpg魂 (ソウル) のゆくえ / ピーター・バラカン (アルテスパブリッシング)  2008.4.18発行

「佐野さんって、ソウルについて詳しいですね」 と言われることがある。これにはどういうリアクションをとってよいのか困ってしまう。実を言うと、まったくソウルについて詳しくないから。「マニアックですね」 とか 「あんたも好きね」 と言われりゃ、すんなり反応できるのだが。私は 56 年の生まれ、最初に音楽っていいなと感じたのは中学生になりラジオを熱心に聴くようになってからだが、周りにいたのはロック少年やフォーク青年ばかりということもあって、当時のソウルのヒットやブラック・ミュージックの流れについて全く実感がない。高校まではもっぱらエアチェック、大学に入ってバイトのお金でやっとレコードを買うことができた。とにかく 60 年代の音楽が好きで好きで、その頃の洋楽ポップスや歌謡曲ばかり聴いていた。ソウルやゴスペル、ブルースに興味を持ったのは就職して東京に来てから、ソウルのシングル盤を最初に買ったのも 83 年頃だったと思う。その後、シリアスなソウル・ファンになったけど、好きなのは 64 年から 73 年頃の 10 年間の音、それ以降のものも聴かないわけじゃないが、60 年代の流れにあるサウンドに限られてしまう。ということで、70 年代の Curtis Mayfield や Stevie Wonder、それに Sly とかあまり聴いていないし、いわゆるファンク・バンドについても疎い、ラップやヒップ・ホップにいたっては全く意味不明といった状態だ。前置きが長くなったが、ここで、このピーター・バラカンさんの 「魂 (ソウル) のゆくえ」 にたどり着く。89 年に新潮文庫から出ていたものを大幅に加筆した改訂版。自費出版したり、ブログもやり始めたので、ソウル・ミュージックの流れを復習し不得意分野も克服したいと思って読んでみることにした。ソウルの教科書と言っても良い内容で、ゴスペル、R&B、ソウル、ファンク、ヒップ・ホップという流れでソウル・ミュージックの歴史がとてもまとまりが良く丁寧に書かれている。後半部分は無知な分野なので、私もなるほどと勉強させていただいた。バラカンさんは 51 年生まれで私の 5 歳上、子供の頃から同時代でソウル・ミュージックに接していて、自らのソウル体験もベースにしながら楽しく書かれている。専門家でありながら分かりにくい用語など使わず、文章も品があって平明。個人的には、好みをもっと出してくれたほうが面白かったという気はするが、本の趣旨から遠慮気味、控えめで理性的なお人柄なのだろう。ソウルは最も解放される音楽、だからもっと多くの人たちと分かちあいたいという筆者の思いがとても素直に伝わってくる。音楽評論家ではなく音楽愛好家だという姿勢も揺るがない、前書きでは、「ごくわずかの例外を除けばソウル・ミュージックは 70 年代半ばに終わってしまったと言っていいと思います」 と言っているので驚いた。まぁ、同感ですね、それはソウルに限らず、どのジャンルの音楽についてもあてはまる事だと思うけど。音楽を供給する側の変化だけじゃなくて、需要側の都合、音楽の楽しみ方や好みも大きく変わってしまったということもあるだろう。話は脱線するが、以前勤めていた会社で私の後輩がスゴイ音楽ファンだって言うから、ちょっと期待して何を聴いているのかって聞いてみたら、某 J ポップの歌手の名前が真面目に返ってきた。カラオケ・ファンと音楽ファンが同意語になりつつある。自分が嫌いなものや良さが分からないものについて、どうこう言うのは好きじゃないけど、こいつは殴ってやりたくなった。音楽が駄目になったのは人間が駄目になったからではないかな。さらに、そこにつけこんだり助長したりする動きもあるから厄介。何でもいいじゃない売れればといった態度でソウルという言葉を扱う輩もいるから困ったものだ。これでは、ソウル・ファンなど増えるはずがない。ジャンル分けとか意味がなくなって音楽はクロスオーヴァーしているけど、SOUL は特別な音楽であり、特別な意味のある言葉。そういった点でも、バラカンさんのような著名で信頼の置ける人がこのような本を書いてくれていることに感謝したい。私の周りのソウル・ファンでこの本を話題にする人はいないし、このブログ見ている人もほとんどそうかもしれない。皆、既にソウルにどっぷり浸かっているからね。でも、なんとなくソウルが好きだという方がいらっしゃるなら、悪い道に迷い込まない前にご一読をお奨めしたい。
13:01:24 | もっと楽ソウル | コメント(0) | page top↑
SOUL 45  THE FALCONS (Lead By JOE STUBBS)
2008 / 08 / 28 ( Thu )
The Falcons / The Teacher (United Artists 229) – 1960
The Falcons / Darling (Atlantic 2153) – 1962
やはり本家 Falcons を聴かなきゃお話にならない。ヒット曲もあり、実力は申し分なしだが、当時 LP リリースはない。白人にも受け入れられるドゥーワップ・グループやロッキン・ソウルではなく、ゴスペルの唱法そのままのブラックネス故なのだろう。この 2 曲は Joe Stubbs がリードで歌っているもので、次に紹介するコレクション LP にも未収録となっている曲だ。世間では Falcons = I Found A Love = Wilson Pickett というイメージが強いが、この不世出の名シンガーを忘れてもらっちゃ困る。59 年の最大のヒット You’re So Fine (Flick 001) も Joe Stubbs が新たに加入してリードをとったもの。ピンと来ない方にはあの The Contours の Just A Little Misunderstanding で歌っている人と言ったら、お分かりか。Jackie Wilson や Hank Ballard に代表されるデトロイト・ヴォイス、そのパワーと勢いは桁外れだ。テンポよくスウィングする The Teacher はよくあるドゥーワップ・ダンスだが、この人が歌うと曲にぐっと陰影が増す。一方、Darling は Mack Rice & Eddie Floyd が書いたバラード・ナンバー。ロマンティックでドラマティック、まことにソウルフルなアーリー・バラード、これは素晴しいです、泣けます。
first falcons 
The Falcons’ Story – Part One (Flick LP 8005)
You’re So Fine / Please Don’t Leave Me Dear / Just For Your Love / [When] You’re In Love / Girl Of My Dreams / Let It Be Me / Goddess Of Angels / Sent Up / You’re Mine / Baby That’s It / Anytime, Anyplace, Anywhere / I Wonder / Juke Hop / No Time For Fun / Whose Little Girl Are You / I’ll Never Find Another Girl Like You
The Falcons’ Story – Part Two (Lu Pine LP 8006)
I Found A Love / She’s My Hearts Desire / You Must Know I Love You / Oh Baby / You’re On My Mind / Lets Kiss And Make Up / Feels Good / Lonely Nights / Take This Love I Got / That’s What I Aim To Do / Anna / What To Do / Fine Fine Girl / Part Time Love / Has It Happened To You Yet / Billy The Kid
The Falcons’ Story – Part Three (Relic LP 8010)
Since You’ve Been Gone / Something Hit Me / I Found A Love / We Met In A Dream / Short & Nappy / I Got A Feeling / Love The Way You Walk / Searching For You Baby / I Ain’t No Cryin’ Man / Round & Round / You’ve Got A Friend / Skinny Girl / Love At First Sight / Never Find Another Girl Like You / Stick By You / Swim
Notes : Donn Fileti & Marv Goldberg

デトロイトの Robert West が手掛けた The Falcons のコレクション。20 年ほど前にリリースされたものと記憶している。第 1 集と第 2 集は CD もあるが、どれも今は廃盤のようだ。The Falcons は 56 年から 64 年にかけて Mercury、Shilhoette、Kudo、Flick、Unart、Chess、Anna、United Artists、LuPine、Atlantic に 19 枚のシングル (再発盤を含む、曲としては 32 曲)を残している。この 3 枚の LP は故 Robert West が所有していたマスター・テープから編集されたもの。全 48 曲、収録シングル曲は十数曲、30 曲以上が未発表及び別テイクということで、貴重で興味深い音源がぎっしりと詰まっている。まず、メンバーの変遷について簡単に。結成当時は、Eddie Floyd、Bob Manardo、Tom Shetler、Arnett Robinson、Willie Schofield の 5 人、Eddie Floyd は Robert West の甥にあたり、Bob と Tom は白人であった。57 年、Bob と Tom が脱退、Joe Stubbs とギタリストの Lance Finnie が加入、同時期、Arnett Robinson に代わり Mack Rice が加入している。その後、Wilson Pickett がリードとなり Joe Stubbs が抜けているが、他にも多少のメンバー異動があったようだ (Earl Martin、Ben Knight というシンガーも一時参加している)。63年春にはメンバーの脱退が相次ぎ、オリジナル・ファルコンズは消滅。同年秋から West がスカウトした Sonny Munro のグループが The Falcons の名前を引き継いでいる。第 1集は初期音源集、58 から 59 年にかけて録音されたものを中心に収録されており、Joe Stubbs がリードで歌っているものが過半数を占める。The Falcons のシングルは基本的にバラードとダンス・ナンバーのカップリング、テンダーでセクシーなテナー Eddie Floyd がバラード・サイド、Joe Stubbs がダンス・サイドのリードをとっているものが多い。ツイスト・ナンバーのようなものもあるが、パワフルで粘ちっこい Joe Stubbs のディープ・ヴォイスはミッドテンポのリズム・ナンバーで本領を発揮する。ということで、大ヒットした You’re So Fine (Flick 001) に続き You’re Mine (Unart 2022)、Just For Your Love (Chess 1743) のシングル 3 曲が溌剌としていて群を抜いた出来ばえだ。未発表の Girl Of My Dreams と I’ll Never Find Another Girl Like You (第3集のライナーでは Eddie Floyd がリードとしているが、この声は Joe Stubbs でしょう) も同一路線、メロも良くて歌いっぷりも激辛、特に後者はシングル曲を凌ぎグレートと言うしかない。Motown に先駆けてこんなソウルフルでキャッチーな曲を歌っていたことに驚いてしまう。また、Joe Stubbs 加入前のシングルも収録されていて彼らの出発点を知ることができる。56 年のデビュー・シングル Baby That’s It (Mercury 70940) はバックもばっちり決まったドゥーワップ・ダンス、リードは Eddie Floyd のようだ。57 年の 2 枚目 Sent Up (Silhouette 521) は Mack Rice が歌うミディアムのダンサー、Little Richard っぽいかな。59 年頃の録音となる未発表曲 You’re In Love はロマンティックなバラード、凛とした Eddie Floyd のヴォーカルが冴え、地味で Falcons っぽくないがこれも好きだね。第 2 集は US BLACK DISK GUIDE でも取りあげられている LP。Wilson Pickett 加入以降の作品を中心にまとめられ、アーリー・デトロイトの最もディープな世界が堪能できる。とりわけ、Ohio Untouchables がバックを務め Pickett が歌う 62 年の大ヒット I Found A Love (LuPine 1003)、Lets Kiss And Make Up / Take This Love Got (Atlantic 2179) の熱気が凄い。Falcons がコーラスを担当している Bennie McCain & Ohio Untouchables の She’s My Heart’s Desire / What To Do (LuPine 1009) も収録。Pickett リードの未発表曲も 2 曲あり、Part Time Love は鬱でブルージーなバラード、JB のお株を奪うようなドラマティックな歌いっぷりだ。古いものでは 59 年の You Must Know I Love You / Thats What I Am To Do (Flick 008) が聴ける。Joe Stubbs がリードで、That’s What I Am To Do はシングルとは別テイク。Sonny Munro の新 Falcons のシングル 2 枚 4 曲が全て収録されているのも嬉しい。力任せな Pickett に比べるとぐっとヴォーカルが熟している。Oh Baby (Atlantic 2207) はアーリー・バラードの傑作、Has It Happened To You Yet (LuPine 1020) は今も絶大な人気を誇るノーザン・ダンサーだ。第 3 集は未発表レア音源集。15 歳の女性シンガー Little Bee のバック・コーラスを付けているもの、Joe Howard というシンガーの Kudo のシングルなども入っており、いずれも 58 から 59 年の録音のようだ。ピアノのみをバックに歌われたデモ録音も多い、Eddie Floyd のリードのものが約半数、保管されていたテープ・ボックスにレコーディング・データがなく、リード・シンガーが定かでない曲もちらほら。一番参っているのが Joe Stubbs の I Got A Feeling かな。シングルでは Pickett が歌っていた Swim のグレート Stubbs ヴァージョン、Sonny Munro が歌う I Found A Love なんていうのも聴ける。セカンド Falcons の未発表曲は他にも 2 曲。普通のソウル・ファンにはお薦めしにくいが、Falcons を極めたい方なら持っていたい 1 枚であろう。ということで、第 1 集と第 2 集だけでも、再度の CD リイシュイーをお願いしたいところだが、発売元の Relic レコードは活動を停止してしまったようだ。なお、Relic の Robert West の関連音源としては The Soul Of Detroit (Relic CD 7034)、Robert Ward (Relic CD 7094、楽p.315) といったコンピレーションもある。Relic 以外では Birth Of Motor Town (RPMSH 249) というRPMから2002年にリリースされたものがあり、そちらは今でも入所可能なはず。最後に、ファルコンズには The Newports (Wilson Pickett、Eddie Floyd、Lance Finnie、Willie Schofield、Mack Rice) というグループ名で 59 年に Hurry Arthur Murray / Chicky Chop Chop (Contour 301) というシングルもある。Pickett のファースト・レコーディング ? で気になっているのだが、私は聴いたことがない。
シングル・データ等については Mitch Rosalsky 氏の Encyclopedia Of Rhythm & Blues and Doo-Wop Vocal Groups も参照させていただきました。
falcons lp
23:06:51 | SOUL 45 | コメント(0) | page top↑
楽CD  THE FALCONS featuring SONNY MUNRO (UK SOUL JUNCTION)
2008 / 08 / 26 ( Tue )
THE FALCONS / GOOD GOOD FEELINGS (UK SOUL JUNCTION SJCD 5000)
1. Good Good Feeling / The Falcons (Big Wheel 333/4) 2. Has It Happened To You Yet / The Falcons (Lupine 124) 3. Standing On Guard / The Falcons (Big Wheel 323/4) 4. I'm Tempted / Sandy Hollis (Big Wheel 325/6) 5. Love You Like You Never Been Loved / The Falcons (Big Wheel 333/4) 6. I Can't Help It / The Falcons [with The Falcons] (Big Wheel 323/4) 7. In Time For The Blues / The Falcons (Big Wheel 331/2) 8. I'm A Fool I Must Love You / The Falcons (Big Wheel 321/2) 9. Love, Love, Love / The Falcons (Big Wheel 321/2) 10. Love Look In Her Eyes / The Falcons (Big Wheel 331/2) 11. Tables Will Turn / Sandy Hollis [with The Falcons] (Big Wheel 325/6) 12. You've Got The Power / The Falcons # 13. Happiest Days Of My Life / Sonny Munro ## 14. On The Other Side Of Pride / Sonny Munro # 15. Don't Leave Me Alone / Sonny Munro # 16. Why Do I Let You Do The Things You Do / Sonny Munro # 17. I'm Tired Of Being Your Play Thing / Sonny Munro ## 18. Standing On Guard / The Falcons [modern take] ## 19. Your Love Is Dy-No-Mite / Sonny Munro # 20. Finished Product / Sonny Munro ##    # unissued ## previously unissued 2008 Notes : John Ridley

The Precisions に続き、60 年代デトロイトのマイナー・シーンで魅力的な輝きを放っていたグループThe Falconsの登場だ。まず、CD ジャケットをご覧いただきたい、この 4 人は楽ソウル (p.177) でもシングル・レビューしているセカンド・ファルコンズ。リードの Sonny Munro が指パッチン、残るメンバーは並んで仲良くグゥーをしていますね。I Found A Love 等で有名な Wilson Pickett や Eddie Floyd が在籍していた名門グループ The Falcons が解散した後、63 年秋から The Fabulous Playboys 改め Falcons の名前を引き継ぎ活動したグループだ。このコンピレーション、Big Wheel のシングル全 8 曲に加え UK で人気の高い Lu-Pine 盤を収録、彼らがコーラスで参加している女性シンガー Sandy Hollis の Big Wheel 盤も両面聴ける。さらに、未発表曲と別テイクが各 1 曲、CD 後半には 70 年代中頃の録音となる Sonny Munro の未発表ソロ作品が 7 曲収録されている。全 20 曲、既に廃盤となっている Johnny Powers の音源をあつめた P-Vine の邦盤 3 巻コンピ Motor City Magic (楽p.309) と半分ほどが重複するが、Big Wheel の 4 曲と Sonny Munro の 3 曲はおそらく初めての CD 化であろう。ここで、John Ridley 氏のライナーも参考させていただき、楽本をちょっと補足しながら内容について触れていきたい。いつものことで話が長くなりそう、先輩ソウル・ファンの方から佐野君のブログは文章が多くて読む気がしないと言われてしまったが、我慢してくだされ。まず最初に Falcons を名乗る前の The Fabulous Playboys について。Carlis Sonny Munro がリード・シンガーで、James Gibson、Johnny Alvin、Frank Holt の 4 人がオリジナル・メンバー。デビュー・シングルは Federal から 56 年に The Ramblers 名義でリリースされている。名前を変えたのは同名の The Playboys との混同を避けたいとの King レコードの A&R マン Ralph Bass からの要請があったため。主にカナダでステージ活動をするかたわら、59 年には The Fabulous Playboys での最初のシングル I Fool You (Contour 004) を発表。Contour は当時彼らのマネージャーであったデトロイトの Robert West (Silhouette、Kudo、Lu-Pine、Flick 等のオーナーで、本家 Falcons を手掛けていた人物) のレーベル。これは私も持っていて、ドゥーワップものだ。その後、Frank Holt に代わり Alton Hollowell が新たに加入、以降は不動のメンバーとなる。彼らがソウル・グループへと脱皮するのは 61 年のこと、若き日の Don Davis がプロデュースした Forget The Past (Daco 1001) を発表、感動的なアーリー・ソウル・バラードで NY の Apollo からも再発されている。この頃、Don Davis は自身のレーベル Daco で The O’Jays のデビュー盤も制作しているが、2 枚とも Don Davis に目をかけていた Hazel Coleman (Berry Gordyの最初の奥さんThelma Colemanの母親、後に Thelma レーベルをスタートさせる) が資金を出してリリースされたもののようだ。The Fabulous Playboys の 2 枚目の Apollo 盤 Tears Tears Tears (Apollo 760) も Don Davis が手掛けており、JB の Please, Please, Please を下敷きにしたゴスペリッシュで重厚なバラードであった。一方、メンバーのソロ・シンガー転向等もあり、本家 The Falcons は 63 年の春には実体が無くなってしまう。そこで、彼らをマネジメントしていた Robert West が後継グループとして白羽の矢を立てたのが自分がかつて面倒をみていた The Fabulous Playboys で、新生 Falcons は Atlantic と Lu-Pine からシングルをリリースすることになる。本 CD には Sonny Munro の情熱的なヴォーカルがフィーチャリングされたバラード Oh Baby (Atlantic 2207) が未収録なのがちょっと残念だが、64 年にリリースされた Lu-Pine の Has It Happened To You Yet は UK では一番人気のブツ、弾けるようなリズムとエモーショナルな歌いっぷりで有無を言わせぬノーザン・ナンバーだ。その後、Mary Wells にまつわる Robert West のトラブルもあって、The Falcons のレコーディングも途絶えてしまう。そんな折、Big Wheel レーベルの Frank Kosian が彼らのマネジメントを引き受けることに。Big Wheel の 4 枚 8 曲は Sonny Munro & James Gibson が全曲ライティング、Dale Warren がアレンジとプロデュースに関わっているようだ。1 枚目と 2 枚目は 66 年のセッション、3 枚目と 4 枚目は 67 年のセッションでバックは Funk Brothers の面々。Good Good Feeling、Standing On Guard、I Can't Help It、I'm A Fool I Must Love You、Love Look In Her Eyes はいずれ劣らずのグレートな楽曲、充実した 60 ズ・デトロイト・サウンドが満喫できる。ほとんど Sonny Munro がメインで歌っているが、I'm A Fool I Must Love You のリードは James Gibson、この人も渋く味わい深い声で歌いあげてくれる。4 曲目と 11 曲目の Sandy Hollis は 66 年のセッション時にいっしょに録音されたものであろう。I'm Tempted は Sonny Munro とのデュエットと言っても良いほどで、力強くノーブルなミディアム。P-Vine 盤には未収録であった Tables Will Turn は The Falcons をバック・コーラスに配して歌われたチャーミングなビート・バラード。このシングルは Falcons の盤よりも珍しい、私も持っていなくてマイ・ウォンツの1枚だ。ライナー・ノーツによれば、Big Wheel の 2 枚目のシングルがリリースされた後、Sonny Munro に代わり一時 The Arabians の Edward Hamilton が The Falcons に加入、これはLou Beatty’s Detroit Soul (Grapevine) のライナーにも書かれていた情報で私も未発表曲があるのか無いのか気になっていた。実際に録音されたものもあったようだが、テープは消失してしまっているとのことで、ちょっとがっかり。Big Wheel では Standing On Guard がそこそこヒットしたものの、運が無いのか Frank Kosian の金銭トラブルもありプロモーションも充分ではなく、セールス的には低調であった。68 年、Big Wheel に見切りをつけた彼らは Ollie McLaughlin の Moira から新たに The Firestones と名をかえて Buy Now Pay Later / I Just Can’t Wait (Moira 102) をリリース。本 CD には未収録だが、両面、Detroit Gold (Solid Smoke) というコンピレーション LP (楽p.312) で聴ける。Mack Rice が書いた Buy Now Pay Later はこれまでのイメージとはちょっと違ったハードでタフなダンサーでかなり興奮させてくれるが、これが最後のシングルとなってしまう。リリース・ナンバーは以上で今聴ける未発表曲は 1 曲のみ、ミディアムのダンサー You've Got The Power は P-Vine 盤にも収録されていたもの。抜群のフィンガー・スナッパ―、リードは Sonny Munro のような Jackie Wilson タイプではなく、もっとスムーズな歌い方をするシンガーだ。ライナーによると Moira 盤と同時期の録音とされているが、何となく Edward Hamilton の声に似ているような。まぁ、これは私の妄想であろう。グループは 69 年に解散、Munro は Invictus の 100 Proof (Aged In Soul) に参加、続いて Johnny Powers と契約し、75 年に Epic から 2 枚のシングルを発表している。制作には Paul Riser や Clarence Paul も関わっており、中でも凄いのが [Tears] Can Only Make The Problems Wet (Epic 50174) で、痺れが走るほど素晴しい。P-Vine 盤には Epic のシングル 4 曲が完全収録されていたが、権利の関係からであろう、残念ながらここには未収録。そのかわり、既発の未発表ナンバー 4 曲に加え新たに 3 曲の未発表曲が聴けるのが嬉しい。テンポのあるバラード Happiest Days Of My Life が私の一押しナンバー、爽やかなミディアム On The Other Side Of Pride も良いね。ピアノとタンバリンのみのシンプルなバックで歌われたデモ録音 I'm Tired Of Being Your Play Thing も美しく力強いバラードで泣ける。メローなミディアムの Your Love Is Dy-No-Mite では Al Green みたいなフレージングが垣間見られ面白い。Standing On Guard の modern take は Falcons とクレジットされているので 60 年代の録音なのだろう、モダンというよりはジャジーなアレンジメントとなっている。James Gibson は 84 年に亡くなっているが、Sonny Munro は今も健在で、女性シンガーも加え Falcons として活動しているそうだ。なにわともあれ、デトロイト黄金期の瑞々しいサウンドと個性的なシンガー Sonny Munro の熱い歌声が今に甦るコレクションということで迷わず買いの 1 枚。CD リイシュー初参戦の Soul Junction、ぽつぽつと Grapevine / Soulscape 関連の未発表音源からシングル盤をカットしていたレーベルだろうか? 企画も仕事ぶりも文句なしで、今後のリリースも期待できそうだ。
falcons cd
(補足) 未発表ナンバー You’ve Got The Power は The Esquires (Scepter 12232、Wand 1193) も歌っている曲で、まったく同じものが Ain’t That Something ! (Hayley HR 1002) のCDコンピに Deon Jackson の未発表曲として収録されている。Ollie McLaughlin が制作したもの、コーラスを担当しているのがThe Falcons (The Firestones) なのだろうか?
23:56:10 | もっと楽ソウル | コメント(1) | page top↑
楽CD  THE PRECISIONS / THE COMPLETE DREW RECORDINGS (UK JOE BOY)
2008 / 08 / 20 ( Wed )

THE PRECISIONS / THE COMPLETE DREW RECORDINGS (UK JOE BOY JBE- 2008)
1. Such Misery (Drew 1001) 2. A Lover's Plea (Drew 1001) 3. Sugar Ain't Sweet (Drew 1002, withdrawn) 4. Why Girl (Drew 1002) 5. What I Want (Drew 1002) 6. If This Is Love [I'd Rather Be Lonely] (Drew 1003) 7. You'll Soon be Gone (Drew 1003) 8. Instant Heartbreak [Just Add Tears] (Drew 1004) 9. Dream Girl (Drew 1004) 10. A Place (Drew 1005) 11. Never Let Her Go (Drew 1005) 12. I Do, Don't You # 13. Such Misery / featuring Paul Merritt [bonus track] # 14. Send Me A Sign / Roger Fluker [bonus track] # 15. Baby You're Mine / Lou Ragland [bonus track] #
# unissued 2008 Notes : George McGregor & Neil Rushton

楽ソウル (p.189) でも、もう少し人気も評価もあってしかるべきデトロイトのグループと書かせていただいた The Precisions。まさに待望のリイシュー、Johnny Powers の Sidra / Drew の全音源を収めたもの。ベリ・レアな Sugar Ain’t Sweet を含む 66 年から 68 年のデトロイト録音。グループの実力に加え、制作に関っているのが Dale Warren、George McGregor、Mike Terry、Brothers Of Soul といった錚々たる面々。さらに、バックを務めていたのはモータウンの Funk Brothers、James Jamerson (bass)、Earl Van Dyke (keyboard)、Don Davis (guitar)、Johnny Griffith (keyboard)、George McGregor (drums) といった最高のミュージシャンたち。これを聴かずしてなにを聴くと言いたい、60 ズ・グループ・ファン、ノーザン・ファンなら迷わず買いのコレクションだ。シングル盤はどれも粒揃いで、様々なタイプの曲が楽しめる。マイ・ベストは Such Misery かな、ノーザン・イントロ・ベスト 3 に入る何とも魅力的な導入部分、これは一度聴いたら忘れられない。話が長くなりそうなので、他のシングルについては楽本を参照いただくとして、ライナーを読んで気になったところ、未発表のボーナス音源について簡単に触れておきたい。まずはメンバーだが、65 年の D-Town 盤では、Michael Morgan、Willie Norris、Paul Merritt、Arthur Ashford のカルテット。66 年の Drew 盤では Michael Morgan、Arthur Ashford、Dennis Gilmore、Ron Davis、Billy Prince の 5 人、Billy Prince がリード・ヴォーカルで、途中でRon Davis は抜けて 4 人になっている。今にも飛び出してきそうな外箱の写真 (アポロでのライブ) を見てもらいたい、George McGregor の言によれば、彼らのステージ・パフォーマンスは The Temptations を凌駕するものであったらしい。未発表の I Do, Don’t You は George McGregor と Mike Terry の制作、You’ll Soon Be Gone に似た感じのアップ・ビート・ナンバーだ。13 曲目の Such Misery は Paul Merritt がリードのヴァージョン、シングル発売前に彼が脱退してしまったことでお蔵入りとなっていた。14 曲目の Roger Fluker は Precisions の振付け師、曲も良いし歌ってもなかなか。最後の Baby You’re Mine は 2006 年に UK からリリースされた The Precisions の 4 曲入り EP に収められていたもの。これは曲を書いている Lou Ragland (楽p.100) 自身が歌っているということで、音源発見当初の誤解を解くために収録されたようだ。苦しげでサッドな歌声が映えるミディアムのビート・ナンバー、クリーブランドはデトロイトに近いとはいえ、何故、Sidra のマスター・テープに彼の曲が残っていたのか気になるね。最後に、Precisions とは関係のない話を。ライナー・ノーツによれば、George McGregor がプロデュースした Timmy Willis (楽p.100) の Sidra 盤はマッスル・ショールズ録音とある。ということで、Jubilee の Easy As Saying 1-2-3 も南部録音の可能性ありかも。
precisions.jpg 
ここで、Another Precisions のシングルを 2 枚紹介しておこう。
The Precisions / Take A Good Look (Hen-Mar 4501) – 1972
これは Philadelphia’s Precisions、デトロイトのグループと同じとしている資料もあるが誤りであろう。72 年の Virtue 録音。Sound Off 5 号のコメントをそのまま転載させていただく。この上なしの切なさやるせなさ、暗く沈みがちなリードに一歩引いたバック・コーラス。胸がウズウズ、心ゆくまで泣いてちょうだいと言わんばかりのフィリー・バラッドの大傑作。フリップの My Sense Of Direction はファンキーなビートのクールなダンス・ナンバー。昔はピンとこなかったが、今ではけっこうイケル。
The Precisions / What Would You Do (Wild 903)
こちらは Boston’s Precisions、シングルはおそらくこれ 1 枚。Wild は Skippy White のレーベル、リリースは 70 年頃のようだが、音は幾分古めかしい。くるくる輪をかく楽しいテンポにのって軽やかに跳ねるダンサー、勢いのあるバッキングでさらに盛り上がってくれる。プレスの状態がイマイチで音に厚みがないのが残念だが、ノーザン・ファンなら持っていたいシングルだ。
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SOUL 45  THE CREATIONS & EMANON’S
2008 / 08 / 19 ( Tue )
The Creations / Take These Memories (Virtue 101470) – 1970
The Emanon’s / Look In The Wants Ads (All Brothers 72869) – 1969
70 ~ 73 年、Virtue から 6 枚、Liberty Bell USA から 1 枚のシングルをリリースしているフィラデルフィアの超甘々グループ。この Take These Memories を最初に聴いたのは 20 年近く前になるかな、場所はボストンのグループ・ソウル・コレクターのお宅であった。あの赤いレーベルとは違った Virtue のデザインに目を奪われ、そして出てくる音にも驚いた。待ってましたとばかりの印象的なイントロダクション、トランペットとドラムスに続く軽やかなファルセット。粘りのあるリズムにタメのあるテンポ、コーラスもばっちり決まって軽やかにステップを踏むダンス・ナンバー。ノーザン・ファンなら絶対の 1 枚だが、このグループとしてはちょっと別ものといった感じのシングル。彼ら本来のスウィート・ナンバーとなると、どれも差が無く高得点を挙げられる。マイ・ベストは You Make Me Feel So Good (Virtue 2521) かな、夢み心地に泣けるバラード。The Price I Have To Pay (Virtue 2518) も気分ののったこみあげ系スウィート、Peek-A-Boo (Liberty Bell USA 82073) は Desciples Of Soul (G.V. 01) のヴァージョンよりも好き。このグループのメンバーで分かっているのは、後に Teddy Pendergrass に代わり Blue Notes のリード・シンガーとなっている David Ebo と The Epsilons のメンバーであった Lloyd Parks の 2 人。次の The Emanon’s は The Creations 加入前に Lloyd Parks が在籍していたグループだ。シングルは 68 年の Phil La Of Soul 盤とこの All Brothers 盤の 2 枚のみ。All Brothers はフィラデルフィアの DJ で彼らのマネジメントをしていた Sonny Hopson のレーベル。Phil Gaber & Bobby Martin がプロデュースした One Heart (Phil La Of Soul 311) は甘くセンチメンタルなバラード。一転、こちらはドラムスが暴れまくるアップ・テンポ・ノーザン。行きっぱなしといったヴォーカルもかなりテンションが高い、決定力抜群のダンス・サウンドだ。さらに、フリップのインスト・ナンバー Bird Walkin’ も UK のノーザン・シーンでは人気が高い。このシングル、セカンド・プレスもあるがオリジナルはベリ・レア。ピクチャー・カヴァー付で Look In The Wants Ads / One Heart で再発盤が出ている。
creations 1 
The Ceations / Just Remember Me (Globe 102) – 1967
Creations / A Dream (Zodiac 1005) – 1967
Globe の Creations はシカゴ、Gerald Dickerson と Charles Boyd をメンバーとする Contributors Of Soul (楽p.172) の前身グループとなる。Globeでは 3 枚のシングルがあり、シカゴ・ノーザンが好きな方なら、全て聴き逃せない。Just Remember Me は都会のストリートを闊歩するようなしゃれたダンス・ナンバー、しゃがれたテナー・ヴォイスが心地好く弾んでくれる。情緒のあるダンス・ナンバー Oh Baby ! (Globe 100) も甲乙付けがたく好きな曲、こちらも胸がときめいてしょうがない。フリップの Plenty Of Love もご機嫌なダンサーだ。I’ve Got To Find Her (Globe 103) はファルセット・シンガーが中心に曲をひっぱり、インプレッションズっぽいかな。ウラは Globe 102 のフリップと同じく Times Are Changing というバラード・、メロディーはテンダーで穏当だが、リード・シンガーの歌いっぷりがディープで気分を盛り上げてくれる。続く Zodiac の Creations は楽ソウルでもちょっとふれたもの。デトロイトからシカゴを股にかけて活動したグループ Brothers Of Soul (楽p.171) のファースト・シングル。Gerald Dickerson のグループがあったためか定かでないが、Creations 名義はこれ1枚。A Dream については Roy "Cortez" Butler (楽p.24) のヴァージョンを楽本で紹介したが、こちらも素晴しい。文字どおりドリーミーに仕上がったノーブルでモダンなダンサー。リードは Richard Knight であろう。翌年、Brothers Of Soul (Shock 1313) でもリリースしているが、そちらでは Fred Bridges がメインで歌っているようだ。
creations 2
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楽CD  THE BIRMINGHAM SOUND VOL.2 (Rabbit Factory 04)
2008 / 08 / 15 ( Fri )
BIRMINGHAM SOUND: THE SOUL OF NEAL HEMPHILL VOL.2 (Rabbit Factory 04)
1. Strickly Soul / Bobby Dobyne & The Barefacts # 2. Get Up And Get At It / Unknown # 3. Testify / Cortez Greer # 4. Matchbox / Ralph 'Soul' Jackson (S.O.B. 39431/2) 5. Let Me Be Myself / Chuck Mitchell # 6. I'm A Telling You / Wes Lewis # 7. Work Hard / David Sea # 8. Take My Hand / Frederick Knight # 9. Instrumental / S.O.B. # 10. Soulful Sound Of Music / Bobby Dobyne & The Barefacts (Crown Ltd 120) 11. Da Da Dee Dee Da / Cortez Greer # 12. Everybody's Doin' The Worm / Hope Parker # 13. It Slipped Right By You / Frederick Knight # 14. When You Wake Up / Fletcher Flower # 15. Set Me Free / Sam Frazier # 16. How When Or Where / Frederick Knight # 17. Stop By / Chuck Mitchell # 18. Let's Go To The End Together / Frankie # 19. Take Me Back / Sam Frazier # 20. Best Of My Years / Wes Lewis (Black Kat 8925677) 21. Let Your Sweet Love Surround Me / Ralph 'Soul' Jackson (S.O.B. 39431/2) 22. Knock In For A Second Chance / Lee Wilson (Black Kat 176297) 23. I've Been Lonely For So Long [demo] / Frederick Knight # 24. Set Me Free [alt version] / Ralph 'Soul' Jackson #
# unissued 2008 Notes : John Ciba & Derek Evers

待つこと 2 年、John Ciba 氏編纂による The Birmingham Sound の第 2 弾。アラバマはバーミンガム、Neal Hemphill の Midfield スタジオから発掘された貴重な音源集。70 年前後から 76 年頃の録音となる全 24 曲、うち 19 曲が新発見の未発表曲。つい先週購入し、もう 20 回以上は聴いただろうか、歓喜に震えいまだに興奮さめやらぬといった状態だ。第 1 集 (楽p.248) よりもさらに粒揃いで、大きく期待を上回る素晴しい内容。ディープ・ソウル、サザン・ソウルが拡散していった 70 年代、マッスル・ショールズやメンフィス、ナシュヴィルといった南部のソウル拠点からはちょっと外れたバーミンガム。音楽ビジネスのあり方も大きく変わり、厳しい環境の中、そんな忘れ去られてしまいそうな地に豊かでディープなソウルが数多く残されていたことに驚き感激してしまう。まずは、シングル・コレクターを最も熱くさせてくれる曲からコメントさせていただこう。21 曲目、Ralph 'Soul' Jackson の Let Your Sweet Love Surround Me、楽ソウル絶賛、ディープ・ファン悶絶必至のグレート・サザン・バラードだ。バーミンガムではなく Fame で録音され Neal Hemphill のレーベルからリリースされたもの、Ralph 'Soul' Jackson は Rick Hall の制作で Amy と Atlantic にもシングルを残しているが、曲がイマイチ、でもこちらはど真ん中のソウルで文句なく凄い。このシンガーについては、UK ノーザン・シーンで絶大な人気を誇るモダンでディープな Black Kat のシングル Set Me Free / Take Me Back (Black Kat 276755) が第 1 集に収録されていた。本 CD のラストでは別録音の Set Me Free が聴ける。シングル・テイクよりもテンポ・ダウンしサザン・ソウルっぽいアレンジ、歌いっぷりもかなりラフでディーペスト、これにも参りましたと言うしかない。音に歪みがあったりするものの、私はイシュー・ヴァージョンよりも好き。ライナーを読むと、シングル・クレジットでは With B’ham Rhythm Section となっているが、実際にバックで演奏していたのは Ralph Soul Jackson のツアー・バンド The Explosions で、こちらが Midfield スタジオのバンド B’ham Rhythm Section をバックに歌われたものとのこと。Hemphill の Black Kat レーベルでシングル・リリースのあるものでは 20 曲目の Wes Lewis も人気が高い。楽ソウル (p.81) でレビューしたのは Roscoe Robinson 作の A サイド It’s Gonna Be Hard で Best Of My Years は B サイドの曲。77 年のリリースだが、録音は 70 年代の初めでライターに Sam Dees と並んで名前のある Frederick Knight がプロデュースしたものらしい。いかにも 70 年代のサザン・ソウルといった感じで甘いバラード。そして、同時期に録音されたとおぼしき Wes Lewis の未発表曲 I'm A Telling You には、なんでこんなものがとあせってしまった。69 年に発表されている Buddy Grubbs (Bell 772) と同じ曲ではありませんか。Pensacola の Pap Don Production で制作された Jerry Butler のヒット・カヴァーで楽ソウル (p.50) でもシングル・レビューしているもの。サウンドも歌いっぷりも Buddy Grubbs の Bell 盤を踏襲、伸びやかなディープ・ヴォイスが心地好く、オリジナルに勝るとも劣らない出来ばえとなっている。この歌えるシンガー、シングルは 1 枚のみだが、バーミンガムでは有名なキーボード・プレイヤーで Atlantic と Clintone にシングルのある Alpaca Phase III Band のオリジナル・メンバーだったそうだ。22 曲目 Lee Wilson の Knock In For A Second Chance も Black Kat のシングル曲、70 年代後半の音、シンセが入る軽快なバック・サウンドにのって苦しげなテナーが駆け抜けるサザン・アップ。アラバマは Huntsville の人、確証はないが声から判断するに USA にシングルのあるシンガー (楽p.248) も同じ人でしょう。Bobby Dobyne のダンス・ナンバー Soulful Sound Of Music もやはり Hemphill のレーベル Crown Ltd からリリースされたもの。このシンガー、シカゴの名門グループ The Artistics のメンバーであった Robert Dobyne のこと。もともとアラバマの生まれ。グループ脱退後、Frederick Knight とともにバーミンガム・スタジオでライターとしても活躍している。冒頭 1 曲目でガツンとやられた Strickly Soul は 69 年の未発表曲。粘りのあるジャンプ・ナンバーで Otis Redding っぽいフレージングが冴え渡りまことに爽快。Crown Ltd のシングルと同じセッションでの録音のようだ。この後、Dobyne は Kwanza、Kama Sutra、Now Sound などからもシングルをリリースしており、Spend A Lot Of Years [Loving You] (Kwanza 7714) は力作ディープ・バラードで、一聴の価値あり。残るは全て未発表ナンバー、初めて聴く曲ばかりでワクワクさせてくれる。まずは 2 曲目、正体不明の女性シンガーが歌う Get Up And Get At It。くだけた雰囲気でスウィングするダンス・ナンバー、バックのバンド・サウンドもご機嫌。ソウル・ミュージックの楽しさがいっぱい、スタジオの近所のミュージシャンたちが集まってギグしたものだろうか、これはかなり気に入ってしまって、リピートで繰り返して聴いている。次の Cortez Greer はジョージア州オーガスタのシンガー、ノーザン・ファンには Very Strong On You (Violet 101) というダンサーで知られている。バーミンガム・スタジオのライター&プロデューサーであった Jerry Weaver が書いた Testify と Da Da Dee Dee Da の 2 曲が聴けるが、特に後者のサザン・ダンサーが素晴しい。作者自身が Da-Dot-N-De-Da (Jackson Sound 1007) としてもシングル・リリースしている曲 (楽p.126)。Testify も深みのある声で歌われたミディアム・アップ。Cortez Greer にも驚いたが、Chuck Mitchell の方がシングル・コレクターには興味深いシンガーかもしれない。ルイジアナはバトン・ルージュの人、こんなところで出会えるとは思ってもいなかった。ソロで Your Good Loving / Her Precious Love (Budix 133)、The Herculoids 名義で When Something Is Wrong With My Baby (Herculoids 1002) と僅か 2 枚のレア・シングルを残すのみ。The Herculoids は Whit や J-Mer にシングルのある Merle Spears とデュオで歌ったもので、かなりエキサイティングな Sam & Dave のカヴァー、CD リイシューもされていて Confessing : Deep Soul From New Orleans (UK Grapevine) で聴くことができる (楽p.277)。Roscoe Robinson がバーミンガムに連れてきたようで、Let Me Be Myself は第1集にも収められていたRoscoe の曲。オリジナルと比べるとあっさりしているが、テンダーなテナー・ボイスで気風の良い歌いっぷりだ。Stop By [Here, Lord] も Roscoe Robinson が The Five Blind Boys Of Alabama で歌っていたゴスペル・スタンダードで、こちらも熱っぽい。ゴスペルと言えば、地元バーミンガムでゴスペルを歌っていたのが若き日の David Sea。昨年 11 月、テンプテーションズの日本公演でも David Ruffin 顔負けのシャウトで実力を見せ付けてくれた。彼の最初のレコーディングは Midfield スタジオで Jerry Weaver がプロデュースしたもの。世に出ることはなかったが、この The Birmingham Sound のおかげで日の目を見たことを喜びたい。重いリズム・ナンバー Hard Work、第1集の Bobby Womack みたいにめちゃくちゃディープな 2 曲も衝撃的だった。86 年 Magic City 盤で注目された David Sea、初期のシングルでは 82 年 Hy-Tyde (T-Jay) から 1 枚、84 年 Hemphill の Crown Limited から 2 枚リリースがある。バーミンガムで最も成功したシンガーとなるとライターやプロデューサーとしても活躍した Frederick Knight だが、Rob Bowman の Stax 読本によれば、売れずにくすぶっていた Knight はデモ録音をせっせと Stax に持ち込んでは Tim Whitsett に 「人と違うことをしないとだめだね」 とダメ出しされていたという。ヒット曲 I've Been Lonely For So Long はそんな言葉に発奮して生まれた曲、収録されたデモ・ヴァージョンは Tim Whitsett に送られたものなのだろうか。他 3 曲では It Slipped Right By You が好きかな、How When Or Where でも歌はともかくライターとしての才能が光っている。12 曲目の Hope Parker は女性、私にはピンと来ないタイプのテンポの速いファンク・ナンバー。やはり初めてお目にかかるのが Fletcher Flower、本名は Fletcher Hewell で Jo Jo Benson の兄弟、Ralph Soul Jackson とは従兄弟にあたるらしい。ここに収められた Cash McCall (Thomas 307) のカヴァー When You Wake Up を聴く限り、歌の実力は身内の 2 人には負けるものの並ではない。意外に感動してしまったのが 15 曲目と 19 曲目、Ralph Soul Jackson の Black Kat 盤両面を再録している Sam Frazier だ。シングルも 2 枚持っていて知らない人じゃなかったのだが。特に Take Me Back が素晴しい、グレートいっても良いほど。もたっとスカッとしないディープ・ヴォイスで切々と一途な歌いっぷり、もう涙がちょちょ切れそうになる。楽本にも取り上げなかったし申し訳無さもあり、ここで Sam Frazier のシングルも聴き直してみよう。やはり Midfield スタジオで 76 年に録音されたもので、2 枚 4 曲とも Jerry Weaver が曲を書いている。I Got Tell Somebody (Goodie Train 055) は優しさに中にも硬派な気概あり、コブシもまわってディープなバラード。GSF の Liberation も歌っている Don’t Spread Your Love Around (Goodie Train 056) もそこはかとないイナタさが味なモダン・ミディアム。ということでコレクションの価値あり、この 2 枚は珍しくないはず。最後の 1 曲となってしまった 18 曲目、ファルセット・シンガー Frankie が歌う Let's Go To The End Together は甘々でやるせないバラード、かなりよろしき雰囲気でスウィート・ソウル・ファンならずともソファーに泣き崩れること必至、これは抜群に曲が良いね。以上 24 曲、Frederick Knight や David Sea を除けば、満足にシングル盤も出せなかったマイナー、無名シンガーたちがほとんど。配管工事の仕事を本業としていたスタジオ・オーナー Neal Hemphill (1985 年、55 歳で亡くなっている) は地元の音楽と地元の才能を愛した人物。商売抜きでやる気のある者ならば誰にでもスタジオを開放、白人や黒人といった区別もなかった。成功はかなわなかったが、そんな暖かい環境の中で生み出された楽曲の数々。ソウル愛とふるさと愛に突き動かされた John Ciba 氏によって実現した企画、第 1 集を含め、ソウルフルでシリアスなソウルに出会いたい方なら、絶対に聴き逃せない CD コレクションだ。
birmingham vol2
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SOUL 45  THE FORMATIONS / HOUSTON OUTLAWAS
2008 / 08 / 12 ( Tue )
The Formations / Lonely Voice Of Love (MGM 13963) - 1968
Silent Majority / Something New About You (Hot Wax 7112) – 1971
フィラデルフィアのグループ。Bank に 1 枚、MGM に 3 枚 (1 枚は Bank の再発)、Corner Boys名義で Neptune に 1 枚、さらに Silent Majority と名前を変えて Hot Wax に 2 枚のシングルがある。メンバーは Jerry Akins、Victor Drayton、Reginald Turner、Johnny Bellman、Ernie Brooks の 5 人。67 年に発表されたデビューの At The Top Of The Stairs (Bank 1007、MGM 13899) が彼らの代表曲。思わず手を叩きたくなるようなテンポのダンス・ナンバー、ノスタルジックなメロディーが心を暖ためてくれる。Leon Huff がプロデュース、テンダーなリードをコーラスが後押し、アレンジメントもいかにもアーリー・フィリーって感じで甘酸っぱい。2 作目の Theres No Room / Don't Get Close (MGM 14009) は両面ともに甘いバラード・ナンバー。前者はミラクルズみたいでやるせなく、ラストではかなり激しく感極まる、後者はエディケンみたいにロマンティック。そして、一段とご注目いただきたいのが Gamble & Huff の制作となるこの 3 枚目。華麗で美しいイントロが印象的、すんなりテンポ・アップ、Four Tops と Temptations を掛け合わせたようなメロディックでビートの強いノーザン・ナンバーとなっている。キーが高くて苦しげに歌うリード・ヴォーカルがまことにソウルフル。ウラの Love's Not Only For The Heart もハイ・テンション、ちょっとファンキーに舞い踊ってくれる。次の Hot Wax 盤はノーザン・ファンやモダン・ソウル・ファンには有名なシングルであろう。素晴しいビート・ナンバー、甘さも漂う快調なテンポに苦味ばしったリード・ヴォーカルがくっきり、どうしようもなく胸が騒いでしまうサウンド。レアじゃないので騒がれないが、Hot Wax の 1 枚目 Frightened Girl / Colours Of My Love (Hot Wax 7008) もお見事、甘いリードのミディアム・バラードと渋いテナーが活躍するアップのカップリングだ。なお、Bank 盤に先立つ 65 年、彼らがバック・コーラスを担当している Margie & The Formations の Sad Illusion / Better Get What Goes For You (Coed 601) というシングルがあり、ポップなモータウン系ガール・サウンドが楽しめる。Hot Wax 以降、Silent Majority 名義で 1 枚 (Detroit Star)、Hot Ice 名義で 3 枚 (Heavy Duty、Atlantic) のシングルがあるが、そちらは未聴。このグループ、曲作りにも才があり、ほとんどの曲がメンバーの自作。Wilson Pickett の Don't Let The Green Grass Fool You (Atlantic 2781) は彼らが書いた曲で、ソウルというジャンルを超えて多くのシンガーやグループにカヴァーされている。
Something New About You # Invictus Soul Box Set (UK Castle)
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Houston Outlaws / Ain't No Telling (Westbound 179) – 1971
Westbound に 4 枚のシングルを残し消えていった謎の「テキサスの無法者たち」、一時、Archie Bell & The Drells の変名ではないかとの噂もあったグループ。手元にあるシングルから推測するに、演奏もこなすソウル・バンドのようだ。It's No Fun Being Alone (Westbound 194) や What Am I Gonna Do (Westbound 211) といったバラードの好盤もあるが、なんと言ってもこの Ain't No Telling が決定的な1枚。転がるようなリズムのモダンなダンス・サウンド、ヴォーカルに絡んでくるホーンも心地好く、浮き立つようなメロディーも美味しいところが盛りだくさん。このシングル盤は珍しくて手に入りにくいが、Kent の CD コンピ Masterpieces Of Modern Soul (Kent CDKEND 222) で聴くことができる。
ここで、楽ソウルで取りあげていなかった CD “ Masterpieces Of Modern Soul “ についても簡単に紹介しておこう。2003 年のリリースで全 22 曲、ほとんどが 70 ズのダンス・ナンバーで、副題が A Varied Collection Of Classy, Mainly 70s Dance Tracks That Consistently Filled The Floors Of Modern Soul Rooms となっている。Houston Outlaws をはじめレア・シングルも数多く、未発表ナンバーもクオリティが高い。珍しい音源として最初に挙げられるのが Sam Nesbit の Chase Those Clouds Away (Amos 154)、バリトン・ヴォイスが吠えまくるグレート・モダン、これはマイ・ウォンツの 1 枚。The Pretenders の Manhattans のリメイク I Call It Love (Carnival 560) もモダン・ソウル・ファンには人気のある曲。楽本で触れたものでは、Lynn Varnado のSecond Hand Love (Yumie 1000) と Gil Billingsley の I'm Me Just Me (Landy Bug 105) の 2 曲が聴ける。未発表曲では The Mayberry Movement の Two Wrongs Don't Make A Right と Ted Taylor の Fair Warning、さらに The Millionaires (Specialty のグループ) の I'm The One Who Loves You が秀逸。他のCDにも収録されているが、Jacqueline Jones の A Frown On My Face や Garland Green の未発表ナンバー、Vernon Garrett の To Be A Part Of You なども何度聴いても素晴しい。フロム LP の Millie Jackson や Denise La Salle の Here I Am Again (Westbound 5008) なんかも入り、レア盤偏重じゃないバランスのとれた選曲となっている。
houston outlaws
07:37:24 | SOUL 45 | コメント(3) | page top↑
楽CD  JUDY CLAY & VEDA BROWN (UK KENT CDKEND 302)
2008 / 08 / 07 ( Thu )
JUDY CLAY & VEDA BROWN / THE STAX SOLO RECORDINGS (UK KENT CDKEND 302)
1 – 16 = Veda Brown
1. Take It Off Her [And Put It On Me] (Stax 0123) 2. Living A Life Without Love (Stax 0123) 3. I Know It's Not Right [To Be In Love With A Married Man] (Stax 0143) 4. Don't Let The Green Grass Fool You (Stax 0143) 5. Short Stopping (Stax 0163) 6. I Can See Every Woman's Man But Mine (Stax 0163) 7. Fever (Stax 0194) 8. Don't Start Loving Me [If You're Gonna Stop] (Stax 0194) 9. Help Me Make It Through The Night # 10. [If Loving You Is Wrong] I Don't Want To Be Right # 11. Guilty Of Loving You (Kent CDKEND 174) # 12. True Love Don't Grow On Trees # 13. That's The Way Love Is # 14. Who Wouldn't Love A Man Like That (Stax CDSXD 116) # 15. I'll Be Your Shelter [In Time Of Storm] # 16. Take My Hand Precious Lord #
17 – 25 = Judy Clay
17. Remove These Clouds (Stax 0006) 18. Bed Of Roses (Stax 0006) 19. It's Me (Stax STS2-2007) 20. Since You Came Along (Kent CDKEND 174) # 21. Somebody's Fool # 22. It Ain't Long Enough (Stax 0026) 23. Give Love To Save Love (Stax 0026) 24. Your Love Is Good Enough # 25. My Baby Specializes [solo version] #
# unissued 2008 Notes : Tony Rounce

Veda Brown と Judy Clay の Stax ソロ音源を収めたコレクション。Veda のシングルは 4 枚、Judy が 2 枚 (ソロで 3 枚シングルがあるが、1 枚目は未収録) ということで、半数が未発表曲。この 2 人、ヒットはあるもののなんとなく見過ごしてしまうタイプ。私も Judy Clay のシングルを何枚持っているかと確認したら、たった 6 枚とカヴァーしているのは 3 割程度。失礼しちゃうが、どうしても欲しいと思って買った記憶がない。今では躊躇なく大好きだよと告白できる Veda Brown も正直言って最初は印象が薄かった。多分、Veda に最初に出会ったのは日本ビクターの 5 枚組 Stax/Volt コレクションだったはず。その後、Stax 以降の Raken 盤 2 枚も手に入れたのだが、これまた熱心に聴いたという覚えがない。ところが、そんな薄情な私の目を覚ませたのが I Had A Fight With Love (Rav 16) という曲だ。77 年にメンフィスのマイナー・レーベルからリリースされたもの。シングル盤は珍しく、Goldmine の For Modern Millionaires で初めて聴いたのだが、先のリリースと思われる Ann Sexton (LP Sound Stage 7) の歌いっぷりに負けず劣らず、その素晴しさに溜め息が。コレクター心が刺激されちゃったということもあるけれど、以来、Stax 盤も Raken 盤も大切に聴かなきゃと反省いたしました。そして、このコレクションの 1 曲目から 8 曲目がその Stax のシングル曲。71 から 73 年の作、楽本で押したマッスル・ショールズ録音のバラード I Know It's Not Right、マクレモア・スタジオ録音のリズム・ナンバー Short Stopping、憂いに濡れた Don't Start Loving Me も泣くしかないって感じで忘れがたい作品ばかり。Fever をはじめカヴァー曲が 3 曲あり、そちらも彼女らしいマナーで歌われ好感が持てる。Take It Off Her は Clarence Carter (Atlantic 2702)、Don't Let The Green Grass Fool You は Wilson Pickett (Atlantic 2781) がオリジナル。9 曲目から 16 曲目が未発表ナンバーとなり、うち初 CD 化は 6 曲、デビューする前にマッスル・ショールズで録音されたものが大半のようだ。中でも一際輝いているのが Guilty Of Loving You、既に Let's Crossover Again (楽P.237) という CD コンピに収録されていた曲。力強く歌われた美しいビート・バラードで、切なく熱い心情がまことにいじらしく胸に迫ってくる。シングルを凌駕するチャーミングな出来ばえ、お蔵入りになってしまったのがまことに惜しまれる。なお、Veda とともにライターに名前のある Larry Robinson は彼女のマッスル・ショールズ録音の多くを手掛けているプロデューサーだ。Luther Ingram でお馴染みなのが [If Loving You Is Wrong] I Don't Want To Be Right と I'll Be Your Shelter [In Time Of Storm]、前者はちょっとテンポのある作りとなっている。いずれも Luther より前に録音されたデモ作品。ホーン無しのシンプルなバッキングだが、ストレートに気持ちをぶつける Veda 嬢のヴァージョンも悪くない。Take My Hand Precious Lord はゴスペル・スタンダード、That's The Way Love Is は Bobby Bland (Duke 360) のカヴァー、Bettye Crutcher 作のバラード Who Wouldn't Love A Man Like That も穏やかながらも沁みる曲、以上 16 曲。ここで、もう 1 人のヒロイン Judy Clay の登場となる。順序が逆になっているが、17 曲目からの 9 曲が 68 から 69 年の Stax 作品、彼女は Veda がデビューする前に Stax を去っている。Veda よりも 10 歳ほど年上、シンガーとしてのキャリアも知名度も上だ。有名ゴスペル・グループ The Drinkard Sisters のメンバーとしての経験を経て、61 年に Ember からデビューしている。続いて LaVette / Scepter から 7 枚のシングルをリリース、67 年には Atlantic と契約。白人シンガー Billy Vera とのデュエット (Atlantic) と平行し Stax からもシングルを発表するが、これは Sam & Dave と同じく Atlantic から Stax へのレンタル契約によるメンフィス録音だったようだ。声に臭みがあり、いかにもゴスペル出身といったコブシのきいた重厚でディープな歌いっぷりの女性。でも、Veda に比べると女の性(サガ)が足りないような、身につまされるようなものはないかな。シングル・コレクトがすすまなかった理由。実生活で女性が全く理解できていないのに、当てにならないと言われてしまいそうだが。そんな私でも、Judy の曲でこだわって好きなシングルが 1 枚ある。William Bell と歌っている My Baby Specialized (Stax 0017) という Hayes & Porter が書いたミディアム・ナンバーだ。適度にポップでモダン、Sam & Dave や Soul Children に負けていない。この曲、やはり William Bell とのデュエットで先にヒットした Private Number (Stax 0005) と同様、もともと Judy がソロで録音したもの。後でヴォーカルに手を加え William Bell の声をかぶせた擬似デュエットというのが真相というから驚く。ここでは本来のソロ・ヴァージョンが聴けるのが嬉しい。バッキングもコーラスもいっしょ、一人で歌っていても魅力たっぷりで非の打ちどころがない。Remove These Clouds や It's Me といった浪々と歌われるスロー・ナンバーも悪くはないが、バラードならば、版権の関係で未収録の You Can't Run Away From Your Heart (Stax 230) だろう。バック・コーラスに Jeanne & The Darlings を配したメンフィス・バラッドの傑作、Stax のボックス CD で聴くことができる。未発表デモ録音では Since You Came Along がノーザン・ファンやちょっとモダンなリズム好きに気に入ってもらえそうだ。ドラムスが良いね、バックにホーンでも付けばもっとゴージャスになっていたはず。ヒットしたデュエット盤はあくまで William Bell が主役、方や Judy のソロ・シングルは不発に終わっている。ライナー・ノーツによれば、Judy 自身はデュエットの件を含め Stax のやり方にプライドを傷つけられたらしく、あまり良い印象を持っていなかったようだ。Stax を後にした彼女は70 年にマッスル・ショールズで Willie West の Greatest Love をリメイク (Atlantic 2697) しており、ディープ・ファンには評価が高い。また、LaVette & Scepter 音源は Marie Knight とのカップリング CD “ Blue Soul Bells Vol.4 “ (Westside、廃盤) に全曲収録されている。ノーザンの好曲 You Busted My Mind (Scepter 12157) ではIrma Thomas と Peggy Scott を足してニで割ったようなヴォーカルが小気味良く跳ねてくれる。タレント豊富な Stax にあって充分なプロモーションもされずに不遇をかこった Judy Clay と Veda Brown。私もなんとなく見過ごしてしまうタイプなんて書いてしまった。目立たないが奥ゆかしいシンガーなどと誉め言葉のつもりで言いたくなるが、本人にしてみれば生易しいものではなかったはず。そんなことを思いながら大切に丁寧に聴いていくと、また一味違って胸に響いてくる。彼女たちより実力も人気もある女性ソウル・シンガーは 50 人は下らないだろう。でも、音盤に刻まれた女心に優劣をつけることなんてできやしない、心優しきディープ・ソウル・ファンならば、2 人の歌声にもしっかりと耳を傾けてほしいな。
judy and veda
19:08:49 | もっと楽ソウル | コメント(0) | page top↑
SOUL 45  THE BLUES BUSTERS / B.B. SEATON
2008 / 08 / 04 ( Mon )
スカやレゲエも好きだというソウル・ファンには未だかつてお目にかかったことがない。周りから楽天的と言われる私もあのすかされるようなリズムとテンポはどうも苦手。でも、好んでソウル・ナンバーを取りあげるミュージシャンもけっこういて、シングル単位で見ると見逃せないものも多い。ここでは、楽本の Jackie Opel や Eddie Spencer に引き続き、ジャマイカン・ソウルの好盤を紹介したい。

The Blues Busters / Inspired To Love You (Shout 235) - 1968
The Blues Busters / Love Is The Answer (Minit 32090) – 1970
ジャマイカの Sam & Dave と称される Philip “Boasy” James & Lloyd “Lloydie” Campbell の The Blues Busters。最初に挙げた Shout 盤は Tommy Tate の CD レビューでも少しふれたシングル。Carson Whitsett & Tommy Tate が書いたジャンプ・ナンバー、Rick Hall のプロデュースで Fame 録音。ブリブリのラッパに威勢の良いヴォーカルが乗っかってまことにソウルフルな出来ばえだ。裏面は Dan Penn & Roger Hawkins の I Can't Stop で Arthur Conley (Fame 1007) や Ben & Spence (Atlantic 2509) でも有名なリズム・ナンバー、同じ Fame でも音が三者三様。バックが重たいせいか、Ben & Spence のような躍動感はないね。これはまだ買いやすいシングルだが、次の Minit 盤はちょっと珍しいかもしれない。プロデューサーに Little Anthony & The Imperials のメンバーであった Clarence Collins の名前がある。両面、自作となるメロディックなアップ。Love Is The Answer では明るく楽しく突っ走り、フリップの Speak Your Mind ではさらにボルテージが上がって二人のヴォーカルがしのぎを削る。裏も表も天晴れパワフルなパフォーマンスだ。Shout 盤については “ Be Hold ! The Anthology “ (Trojan) という CD に収録されている。このベスト盤 CD、Wings Of A Dove、I Won't Let You Go、Be Hold、Soon You'll Be Gone といった彼らの代表曲は勿論、Shout と同じく Fame で録音された Jimmy Hughes (Fame 1014) のカヴァー Don't Lose Your Good Thing をはじめ、Sam Cooke の That’s Heaven To Me、インプレションズの I’ve Been Trying や Tommy Tate (Okeh 7253) の Lover’s Reward といったソウル・ナンバーが聴けるので、お薦め。J.P. Robinson (Alston 4583) の What Can I Tell Her も歌っているが、そちらはレゲエ・ヴァージョンであった。
blues busters 
B.B. Seaton / God Bless Our Love (Form 1011 Jamaica) – 1974
B.B. Seaton / I Could Spend A Night With You (Hot Stuff no# Jamaica)
このシンガー、The Gaylads というグループのメイン・ヴォーカルで My Jamaican Girl という曲が有名だが、そちらは聴いたことがない。Form のシングルはディープ・ソウル・ファンにはけっこう知られているのではないかな。言わずと知れた Al Green の名曲、A 面がレゲエ・ヴァージョンで B 面がソウル・ヴァージョン。やっと 5 年ぐらい前に入手。昔々、あるコレクターの方から聴かせてもらって凄いと思ったのだが、手に入れてしまうとそうでもない。持っていない、どうしても欲しい、そして冷静さを失うというパターンである。ちょっと水を差してしまったが、コレクターなら持っていたい 1 枚であることは確か。ヴォーカルに強烈なものはないが、雰囲気は満点ということで 90 点はあげられる。そして、Hot Stuff のシングルは 2 年ぐらい前に友人から譲ってもらったもの、レゲエの人がこんなモダンなソウルをやっていたなんてと驚いた記憶がある。サビのメロディーもかなりキャッチー、渋いヴォーカルが気持ち良く天翔ける。微妙な音もかえって新鮮、70 ズ・モダン好きには堪えられないダンサーであろう。ただ、このシングル、ジャマイカ盤にありがちな悪質なプレス、音がこもっているのが惜しい。なお、私の所有盤はラベル・ミスで A 面の Disco Reggae の方にこの曲が入っている。
b b seaton
01:32:40 | SOUL 45 | コメント(2) | page top↑
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