楽CD  SPENCER WIGGINS / FEED THE FLAME (KENT)
2010 / 07 / 24 ( Sat )
SPENCER WIGGINS / FEED THE FLAME ; THE FAME & XL RECORDINGS (KENT CDKEND 340)

1. I’m At The Breaking Point #  2. We Gotta Make Up Baby (Vivid LP VG 3002) 3. This Love Is Gonna Be True # 4. Holding On To A Dying Love # 5. You’re My Kind Of Woman (Vivid VS 1026) 6. I Can’t Be Satisfied (Sounds Of Memphis 716) 7. I’d Rather Go Blind (Fame 1470) 8. Love Works That Way (Kent CDCH2 1226) 9. Feed The Flame (Vivid VS 1026) 10. Make Me Yours # 11. Ooh-Be Ooh-Be-Doo # 12. Take Time To Love Your Woman (Sounds Of Memphis 716) 13. Let’s Talk It Over (Kent CDKEND 313) 14. I Can’t Get Enough Of You Baby (Vivid VS 1026) 15. Double Lovin’ (Fame 1470) 16. Love Machine (Fame 1463) 17. Love Attack (Kent CDKEND 313) 18. Hit And Run # 19. Best Thing I Ever Had (Kent CDKEND 283) 20. Water (Vivid LP VG 3007) 21. Love Me Tonight (Fame 1463) 22. Cry To Me (Vivid LP VG 3007)
2010  # previously unissued    Notes : Dean Rudland

スペンサー・ウィギンズの幻の未発表音源集。もったいなくて、購入して、1 週間は神棚におそなえしてから、ありがたみをかみしめながら毎日聴いております。ここを見てくれているディープ・ソウル・ファンは皆さん買っているはず。私がどうこう言う余地も無いのだが、ちょっと気になっていることなど書かせてもらいます。
まずは、Goldwax 録音となる (2) We Gotta Make Up Baby、(8) Love Works That Way、(13) Let’s Talk It Over、(17) Love Attack、(20) Water、(21) Love Me Tonight、(22) Cry To Me の 7 曲、スペンサーが Goldwax から Fame に移籍するにあたって、これらの曲の権利も譲渡されたため、” Spencer Wiggins / The Goldwax Years “ (Kent CDKEND 262) には未収録となっていたもの。Love Me Tonight は Fame でシングル・カットされたが、残る 6 曲は Vivid の邦盤 LP 及び CD でのみ聴くことができた音源だ。なお、昨年、Kent が正規にライセンスを取り、Let’s Talk It Over と Love Attack は “ Goldwax Northern Soul “ (Kent CDKEND 313) に、Love Works That Way は “ The Complete Goldwax Singles Volume 1 “ (Ace CDCH2 1226) に収録されている。67 年から 68 年にかけての音、どこのスタジオで制作されたのか気になっているが、「ゴールドワックス・ノーザン・ソウル」 のライナーでは、Let’s Talk It Over と We Gotta Make Up Baby は 67 年 7 月に Sam Phillips のスタジオで録音されたものとされている。今回聴き直してみると、他の 5 曲もメンフィス録音のような気がするが、これは私にも自信が無い。We Gotta Make Up Baby は Donald Height で知られた曲 (Shout 213)、シャウトのシングルも 67 年にリリースされているのでどちらが先の録音なのかは不明、スペンサーの方がテンポは少し早い。Love Works That Way は典型的な Goldwax のサザン・バラード、I’ll Be True To You とのカップリングでブート・シングル (Goldwax 118) があり、シングルはプレス・ミスで音が途中で飛んでしまう。UK でも人気のノーザン・ナンバー Let’s Talk It Over は本 CD ではライター・クレジットが Gene Miller となっていたので驚いた。Love Attack については、もう何も言うことが無い、スペンサーのあまたの熱唱の中でも最も神がかっている。オリジナルは James Carrのスロー・バラード。話は変わるが、この曲を聴くと、Otis Redding が自身のシングルのスロー・サイドをアップに、アップ・サイドをスローで歌い直そうという企画を持っていたことを思い出し、さらに鳥肌が立ってくる。そして、嘆きのバラード Water にも痺れが走る、これは耳を澄まして聴いてほしい、イントロのかすかなオルガンの音色とバック・コーラスに涙してしまう、めちゃくちゃ感動的な曲だ。コレクションのトリとなるのが Cry To Me、言わずと知れたバート・バーンズ作の NY ディープの名曲、スペンサーの妥協を許さぬ歌いっぷりに圧倒されるのみ。
Fame 録音は 9 曲。シングル・リーリースされたのは、(7) I’d Rather Go Blind、(15) Double Lovin’、(16) Love Machine の 3 曲で待望の初 CD イシューとなる。Fuji (Ellington Jordan) の I’d Rather Go Blind はやはりフェイムで録音された Etta James (Cadet 5578) が有名。楽ソウルでもシングル・レビューさせていただいたが、しんみりした曲の風味にちょっぴり辛子を加えたスペンサーの歌いっぷりをとくとご賞味いただきたい。Double Lovin’ は George Jackson の曲、スペンサーの曲では最もポップだが、この人が歌うとハレルヤと叫びたくなるようなゴスペル・ソングに聴こえてくるから不思議だ。Love Machine はファンク調のダンサー、バック・サウンドもスペンサーの熱唱も非の打ちどころがない。なお、この曲のフリップとしてカットされた カントリー・ソウル・バラード Love Me Tonight は Goldwax 録音、ストリングスは Fame で付け加えられたものであろう。
そして、私を最も興奮させてくれたのが (1) I’m At The Breaking Point、(3) This Love Is Gonna Be True、(4) Holding On To A Dying Love、(10) Make Me Yours、(11) Ooh-Be Ooh-Be-Doo、(18) Hit And Run の 6 曲、69 年から 71 年にかけて Fame スタジオで録音された未発表ナンバーだ。I’m At The Breaking Point はタイトなリズムのアップ・ナンバー、伸び伸びと張りのあるスペンサーの歌いっぷりに胸が高鳴ってしょうがない。これまで歌っていなかったタイプのハツラツとした曲、嬉しくてありがたくて、どこかでソウルの神様が微笑んでくれているような、何ともいえない幸福感に包まれる。This Love Is Gonna Be True と Holding On To A Dying Love のライターにはジョージ・ジャクソンの名前が。前者は悲しみをたたえたミディアム・アップ、後者は Otis Clay が 72 年のアルバム ” Trying To Live My Life Without You “ (HI 32075) で歌っている曲だ。Holding On To A Dying Love については、楽ソウルで取り上げた “ The Best Of Otis Clay “ (Right Stuff) のライナーに Spencer Wiggins が先に歌っていると書いてあったので気になっていたが、雷が落ちてくるようなシャウトに長年のモヤモヤも晴れた。Make Me Yours は Bettye Swann のヒット・カヴァー、オリジナルのイメージが強いので、素直にグレートとは言えないものの、意外な選曲というのが楽しい。Clarence Carter が曲を書いた Ooh-Be Ooh-Be-Doo はスペンサーの歌声がリズミカルに駆け抜ける心地の良いダンス・ナンバーだ。ブルージーなミディアム Hit And Run はちょっとバックの音がロックっぽいかな。
残る 6 曲は、Sounds Of Memphis の音源。(6) I Can’t Be Satisfied と (12) Take Time To Love Your Woman は既に “ The XL and Sounds Of Memphis Story “ の第 1 集と 2 集に収められている 73 年のシングル曲。70 年代最高峰のサザン・バラードとサザン・ジャンプのカップリングと言ってしまおう。(19) Best Thing I Ever Hadは “ The XL and Sounds Of Memphis Story “ (CDKEND 283) に収録済みの未発表曲、曲も歌も文句無しなので贅沢を言ってはいけないし気になるのは私だけかもしれないが、雰囲気にそぐわないギターが出しゃばって耳障りなのが残念。残る 3 曲、(5) You’re My Kind Of Woman、(9) Feed The Flame、(14) I Can’t Get Enough Of You Baby は Vivid の邦盤 LP 及び CD で聴くことができたもので、楽ソウル (p.228) でも簡単にコメントさせていただいた曲。You’re My Kind Of Woman はゆったりとそれでいて颯爽とした Dan Greer サウンドの見本のようなミディアムのバラード、思う存分コブシをきかせるスペンサーの歌声も最高だ。Feed The Flame は Dan Penn & Spooner Oldham が書いたバラード・ナンバー、67 年の Quinvy 録音となるTed Taylor (Atco 6481) がオリジナル。スペンサーも曲の趣を大切にしながら歌ってくれている。I Can’t Get Enough Of You Baby はファンキッシュなリズム・ナンバー、どうしても感情を込めて歌わずにはいられないって感じがいいではありませんか。
他のジャンルの音楽の過去音源の発掘作業については事情に疎いので間違っていたらご免なさい。こんな決定的な音源が 40 年も経って発表されるというのはソウル・ミュージックだけじゃないのかな。嬉しさの一方、何故これまで日の目を見ることが無かったのか、売れたり注目されるということと曲のクオリティーや歌い手の素晴しさとはまた別だとは分かっていても、複雑な思いがしてしまう。だからこそ、この CD はセールス面でも健闘してくれなければいけない。ディープ・ソウル、サザン・ソウル・ファンには定価の 100 倍以上の価値のあるアルバム。そうじゃない方でも、ソウルという音楽に少しでも興味があれば、聴いて得すること間違いなし、私を信じて是非買っていただきたいのであります。


spencer fame 
22:34:28 | もっと楽ソウル | コメント(3) | page top↑
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