楽CD  THE TRAGAR & NOTE LABELS (NUMERO 020)
2008 / 07 / 07 ( Mon )
Numero からまたも大盤振る舞いのコンピレーション。シングル盤に熱き思いのコレクターなら、堪らぬ内容。ジョージア州アトランタの Tragar とその系列レーベルの作品を集めたもの。サザン・ソウル、ファンク、モダンなダンサー、スウィートからクロスオーヴァーっぽいものまでレアな音源がぎっしりと詰まった 2 枚組。レーベル・オーナーはアトランタ生まれの Jesse Jones という方。50 年代にバンドを組み地元で活動していたサックス奏者。56 年に西海岸に移り、Art Rupe の Specialty で Robert Bumps Blackwell のもとアレンジャーとして活躍。Art の奥さん Lee Rupe の Ebb では 4~5 枚シングルをリリース、The Hollywood Flames に曲を提供したりもしている。LA では自身のレーベル Four-J をスタートさせ、Lonnie Russ、Jimmy Lewis、James Conwell などのシングルが知られている。ヒットは出せず、故郷に戻り心機一転スタートさせたのが Tragar レーベルだ。1968~69 年、20 枚のシングルをリリース。70 年、新レーベル Super Sound からシングル 2 枚、71 年には Note レーベルを立ち上げ 76 年まで存続、18 枚のシングルを制作。なかなか手に入りにくいシングルばかりだが、ほぼこの CD でカヴァーできる。最初のリリースが Tokay Lewis の Who Wants Me Now。楽ソウルでも取りあげたのどかなサザン・ミディアム、そこはかとない哀愁があって大好きな曲だ。ライナー読むと本名は Barbara Lewis といって Jimmy Lewis の奥さん(後に離婚)だった女性、曲も彼女自身が書いている。フリップの What Can The Matter Be はメランコリックなスロー・バラード。ブルース・ギターと嘆きのヴォーカルがやるせない。そして、Jesse Jones が最も力を入れたシンガーが Eura Cooper という女の子。Tragarに 4 枚、Super Sound に 1 枚、Note に 4 枚(同じ曲が数回プレスされている)、計 9 枚のシングルがあり、バラード・ナンバーの Since I Fell For You (Tragar 6816) が未収録なのが残念だが、ここでなんと 11 曲も聴くことができる。声質もディープというには幼く、歌いっぷりもソウルフルというには肺活量が足らないが、抗いがたい魅力があって私は大好きだ。デビューは 14 歳で自作曲というから驚いてしまう。ちょっとポップな Shake Daddy Shake、パーカッシブなサウンドと揺れるようなユーラのヴォーカルが微妙なニュアンスを醸し出している。このシングルはローカル・ヒットし、Atlantic からもリリース。Love Makes Me Do Foolish Things は Martha & The Vandellas のカヴァー。That's How Much I Love You も気の張ったミディアムでついつい応援したくなる。もっと良いのが Try という曲、シックでリズミックなミディアム、UK で人気というのがうなづける。若くしてこんな素敵な曲を自分で書いちゃっているというのも恐れ入る。さらに、この CD コレクションのハイライトとなるのが、楽ソウルでも取りあげた Let Our Love Grow Higher であろう。ユニークでマニアックなサザン・ダンサー、70年にマッスル・ショールズで録音されたものだ。リリースは飛ぶが、Standing By Love と I Need You More も同じセッションの曲、前者は非力なヴォーカルが涙を誘う、後者も泣かせどころありのバラード。Beggars Can't Be Choosey は Moonsong の Sam Dees と David Camon が曲を書き、これも Fame で吹き込まれたもの。音程が微妙だが、写真を見るとなかなかの美形ということで、さらに点数が甘くなる。Beggar については Kent の Hotlanta Soul の第 2 集 (Kent CDKEND 183) ですっきりした作りの別ヴァージョンも聴ける。またまたライナーで教えられたのだが、King 盤でコレクションしていた Cherry Blend はユーラがシニア・ハイ・スクールの友達 3 人で結成したグループとのこと。なお、Diplomats はアラバマを拠点としていた Eura のライブ・バンドで、彼女のマッスル・ショールズ録音についてはメンバーの Bill Paterson が全てライティング。シングル・コレクターにはちょっと気になる人がもう 1 人。Tee Fletcher (Thomas Fletcher) は Matt Brown の Jar-Val 盤、Eddie Billups の Shake Off That Dream (Seventy-Seven 127) 等のライター&プロデューサーとして知られた存在。シンガーとしても Josie と Wendell Parker の Surfine、そして Tragar に 2 枚( 3 曲)、計 4 枚のシングルを残している。Tragar の All Because Of You がヒズ・ベスト、スイスイと流れに身をまかすダンシング・バラッド。同じダンサーでも Would You Do It For Me は調子が良すぎで趣に欠ける、ファンキーな Down In The Country はまずまず。ファンク・ファンならば、Sandy Gaye も聴き逃せない。Watch The Dog That Bring The Bone は Marva Whitney みたいでかなり快調。フリップの Talk Is Cheap は重厚なバラード。両面とも Tuska のシングルでコレクターには有名な Richard Marks と Bill Wright が曲を書いており、Bill Wright の Tragar 盤もこの 2 人の作。ここでギターを弾いているのも Richard Marks のよう。おそらく Sandy Gaye と同じセッションで取られたものだろう。You Got A Spell On Me は慌ただしいアップ・ナンバー、文字どおり息を切らしての熱唱。You're The Only Thing I've Got Going For Me は中高年に好まれるであろう渋いディープ・バラードだ。ささくれたヴォーカルを優しく女性コーラスが包み込んでくれる。この曲、フリップ・サイドを変えて 74 年に Note 7209 として再プレス。楽ソウルではそちらの盤のクレジットからバーミンガムの New London スタジオの制作としたが、69 年のアトランタでの録音が正しい。さらにディープ・ファンに喜ばれそうな Richard Cook も楽ソウルを参照いただきたい。Love Is So Mean はオーティス・タッチのバラード、Somebody Got'a Help Me は Arthur Conley のジャンプ・ナンバーを彷彿させる。少々荒削りだが両面ともにスタックス・ライクな1枚、他にシングルがないのが残念なシンガーだ。Franciene Thomas もシングル 1 枚のみの女性シンガー。I'll Be There はファンクのコレクターには知られている曲。一方、Too Beautiful To Be Good はディープなバラード、素っ気無さの中にも哀愁を感じるね。Sonia Ross の Let Me Be Free は初めて聴いた。これはアガシ好きには辛抱できない上玉ガールズ・ミディアム、もう胸がキュンとして泣いちゃいそうなぐらい素晴しい、こういうのにめっぽう弱くて困ってしまう。是非ともシングルで聴きたい曲だが、市場に出回らなかったらしくソニアご本人が 1 枚持っているきりだそうだ。Nathan Wilkes というシンガーもお初だが、Now That I'm Wise はゆったりとタメがあって、しっとりと浸れるバラード。デュオも 2 組。Frankie & Robert ことFrankie Brown & Robert Lee。ミディアム・アップの Love、ファンク・ビートの Sweet Thing、辛いディープ声と甘ったるい声が絡みあって、ちょっとユニーク。後者はドラムスが大活躍、曲調にそぐわぬサックスが入ったりとバック・サウンドも聴きもの。Langston & French は Langston George & Charles French。Langston George は The Pips のメンバーだったこともあり、グラディス・ナイトの従兄弟にあたるそうだ。Tumbling Down はテンダーなバラード、Sam & Dave というよりは The Knight Brothers を思い起こさせる暖かい出来。Chuck Wilder には Tragar の他に Baja に 2 枚シングルがある。ディープ・コレクターには Good Bye Otis (Baja 54005) で馴染みがあるかもしれない。Alice Swoboda の I Think It's Time はユーラ同様マッスル・ショールズ録音。これはソウルではないね。この人、アトランタのフォーク・シーンでは知られたシンガーとなっている。お待たせいたしました。スウィート・ファンの方々、DISK ONE はちょっとつまらないかもしれないが、DISK TWO で気分を盛り上げていただきたい。ここに収められたグループ 2 組を聴けるだけでも買って損は無いはず。Four Tracks の Charade はクールで飛びっきりのかっこ良さ、70 ズ・クロスオーヴァー・ダンサーの傑作として不動の人気盤だ。フリップの You Mean Everything To Me はもうどうにでもしてってかんじで身を委ねたくなるブルー・ノーツばりのバラード。この 4 人組、アラバマはバーミンガムのグループ。2 枚目のシングルも用意されていたが、発売には至らなかったようだ。Young Divines は Jesse Jones がマネジメントしたアトランタのグループ。76 年にリリースされた Ain't That Sharp は軽快なダンサー。2 枚目の Deep In Your Heart も同一路線。甘茶ファンなら、このシングル、裏で昇天間違い無し。I'll Show You With Love は真綿で胸がしめつけられるようなやるせなさいっぱいのスウィート・バラードであります。いつものことながら、貴重な写真も満載、地道な現地調査に基づくライナー・ノーツも素晴しく、仕事の質の高さには頭が下がる。内容のマニアックさに加え収録曲がまったく分からないパッケージ、買いにくい人もいるはず。これで儲かるんだろうか?と心配になってくるが、人知れず忘れ去られてしまいそうなシングル音源に暖かく光をあててくれる Numero には末永く頑張ってもらいたいね。
なお、レコード番号が明記されていなので、こちらで調べました。不備があるかもしれません。
Georgia Soul Recordings http://www.georgiasoul.com/index.html も参照。
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ECCENTRIC SOUL: THE TRAGAR & NOTE LABELS (NUMERO 020)
[Disc One] 1. Down In The Country / Tee Fletcher (Tragar 6802) 2. You Got A Spell On Me / Bill Wright (Tragar 7324) 3. Heavenly Father / Eula Cooper (Tragar 6809, Atlantic 2635) 4. The Clown / Chuck Wilder (Tragar 6804) 5. Now That I'm Wise / Nathan Wilkes (Tragar 6817) 6. Nitecap / L. Daniels (Tragar 6812) [inst] 7. I'll Be There / Franciene Thomas (Tragar 6803) 8. Sweet Thing / Frankie & Robert (Tragar 6805) 9. Shake Daddy Shake / Eula Cooper (Tragar 6809, Atlantic 2635) 10. What Can The Matter Be / Tokay Lewis (Tragar 6801) 11. Love Is So Mean / Richard Cook (Tragar 6811) 12. Tumbling Down / Langston & French (Tragar 6813) 13. Love Makes Me Do Foolish Things / Eula Cooper (Tragar 6814) 14. Too Beautiful To Be Good / Franciene Thomas (Tragar 6803) 15. Tipping Strings / The Knights (Tragar 6806, Baja 4506) [inst] 16. Somebody Got'a Help Me / Richard Cook (Tragar 6811) 17. Love [It's Been So Long] / Frankie & Robert (Tragar 6805) 18. Strange Feeling / Nathan Wilkes (Tragar 6817) 19. I Can't Help If I Love You / Eula Cooper (Tragar 6816, Tragar 6820) 20. Why / Chuck Wilder (Tragar 6804) 21. Who Wants Me Now / Tokay Lewis (Tragar 6801) 22. You're The Only Thing I've Got Going For Me / Bill Wright (Tragar 7324) 23. Let Me Be Free / Sonia Ross (Tragar 6818) 24. Would You Do It For Me / Tee Fletcher (Tragar 6802) 25. Try / Eula Cooper (Tragar 6814)
[Disc Two] 1. Watch The Dog That Bring The Bone / Sandy Gaye (Tragar 6815) 2. All Because Of You / Tee Fletcher (Tragar 6810) 3. Messing Around / Bobby Owens & the Diplomats (Super Sound 7001) 4. Let Our Love Grow Higher/ Eula Cooper (Super Sound 7002) 5. Ain't That Sharp / Young Divines (Note 7215) 6. Charade / Four Tracks (Note 7212) 7. Breaking My Heart / Sonia Ross (Tragar 6807, unissued) 8. Love Is Gone / Cherry Blend (Note 7204, King 6402) 9. I Need You More / Eula Cooper (Note 7201, Note 7208, Note 72100) 10. I Think It's Time [You Were Mine] / Alice Swoboda (Note 7101, Roulette 7139) 11. The Hump / The Knights (Tragar 6808) [inst] 12. Beggars Can't Be Choosey / Eula Cooper (Note 7208) 13. Standing By Love / Eula Cooper (Note 7100, Note 7210) 14. Deep In Your Heart / Young Divines (New London Int 1004, Cotillion 44223) 15. You Mean Everything To Me / Four Tracks (Note 7212) 16. I'll Show You With Love / Young Divines (New London Int 1004, Cotillion 44223) 17. Every Now And Then / Sonia Ross (Tragar 6818) 18. Love Makes Me Do Foolish Things / Andrea Williams (Note 7205) 19. Have Faith In Me / Eula Cooper (Super Sound 7002) 20. Talk Is Cheap / Sandy Gaye (Tragar 6815) 21. Can't Stand It / J.J. Jones (unissued ?) [inst] 22. Let's Get Funky / Langston & French (Tragar 6813) 23. That's How Much I Love You / Eula Cooper (Tragar 6820) 24. Black Midnight / J.J. Jones (unissued ?) [inst] 25. Potters Field / Alice Swoboda (Note 7208)
2008 Notes : Rob Sevier & Ken Shipley with Brian Poust
23:13:38 | もっと楽ソウル | コメント(0) | page top↑
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