楽CD  MARY GRESHAM (UK SOULSCAPE 7008)
2008 / 07 / 12 ( Sat )
MARY GRESHAM / VOICE FROM THE SHADOWS (UK SOULSCAPE 7008)
- The Story Of A Muscle Shoals Soul Sister -
1. Let's Walk Down The Street Together [as Chuck & Mariann] (A-Bet 9432) 2. The Woman In Me [as Mariann] (A-Bet 9432) 3. Going Through The Changes [as Chuck & Mariann] (A-Bet 9438) 4. Motivation [as Mariann] (A-Bet 9438) 5. Just Me And You # 6. Spend A Little Time [Loving The World] # 7. Try [Just A Little Bit Harder] # 8. Get On Back On The Right Track # 9. Rainin' In My Heart # 10. The Colour Of Man # 11. I'll Never Let You Walk Alone # 12. Leaving Me # 13. Use Me # 14. You've Been Doing Wrong For So Long # 15. I Want To Be Loved # 16. I'm Not Made For Love # 17. Nobody's Gonna Turn Me Against You # 18. Sorry We Didn't Make It # 19. You've Never Really Lived [Until You've Loved Someone] # 20. Promises Are Not To Be Broken # 21. His Love Can Be No Stronger # 22. Stay There And Try To Be Strong # 23. We Are So In Love # 24. So Many Ways #
# unissued 2008 Notes : Garry J. Cape

4月頃、UK Soulscape からリリースされた CD アルバム。Mary Gresham って誰?といった感じで私も全くピンとこなかったのだが、発売前のインフォメーションで男女デュエット Chuck & Mariann として 2 枚のシングルをリリースしているマリアンのことだと知った。収められているのは 24 曲、シングル 4 曲 (B面 2 曲はソロ作品) を含み、残る 20 曲は彼女単独の未発表ナンバー。なんと言っても全曲マッスル・ショールズ!がらみの録音というのが嬉しいではありませんか。ど真ん中の剛速球でどんどんストライク・ゾーンに投げ込んでくるって感じで、実に気持ちがいいね。未発表曲のレベルも高く、Mary の一途で奥行きの深い歌いっぷりにも泣けてくるって按配だ。知られざるシンガーの発掘音源としては、ここまでのものはちょっと思いつかない。Ann Sexton、Annette Snell、Ella Washington、Sandra Wright、Veda Brown なんていう奥ゆかしくてちょっと目立たない南部の女性が好きだという方、これを聴き逃してはいけません。感激で胸が熱くなる一方、こんなに才能豊かなシンガーがこれまで世に知られることがなかったなんて悔しいような、ビジネスというのは厳しいものだなと、複雑な心境で何回も聴き直しております。しんみりしてしまったが、順を追って内容について触れていきましょう。まず、1~4 が 68~69 年のシングル曲。Minaret レーベルの Finley Duncan がプロデュース、ナッシュヴィルの A-Bet から発売されたもの。Mariann のパートナー Chuck ことChuck Cooper は当時マリアンの旦那で、既に Elmore Morris と組み The Double Soul (楽P.162) というデュオでシングル・デビュー (Minaret 133) していた骨っぽい男性シンガー。Finley にとって音楽ビジネスの先輩であった Shelby Singleton が Peggy Scott & Jo Jo Benson でヒットを飛ばしたことから刺激されてのリリースだったのかもしれない。デビュー作となった Let's Walk Down The Street Together は Peggy & Jo Jo の二番煎じではないんだぞといった気概も感じられる力の入ったディープ・バラード。曲を書いているのが Big John Hamilton、R.J. Benninghoff (Arjay)、Finley Duncan、Larry Shell といった面々。Finley Duncan は当時レコーディング・スタジオを持っておらず、マッスル・ショールズの Fame で録音されている。バックは Roger Hawkins (drums)、David Hood (bass)、Barry Becket (keyboards)、Junior Lowe (guitar)、そして Memphis Horns がバックアップ。Mary のソロとなる The Woman In Me もサザン・ビートにのって歌われたバラードで身に沁みる。ディープ・ソウルのシングル・コレクターなら、まずは持っていたいシングル盤だ。セントルイス等で話題になるも、全国的なプロモーションができず、残念ながらヒットすることはなかった。5~10 は Finley Duncan が新設した Playground スタジオで制作され、お蔵入りとなっていたもの。ホーンについては Fame でオーバーダビングされている。ライナー末尾では 69 年作となっているが、Mary の言によれば、70~71 年の録音のようだ。Mary お気に入りのゆったりとしたミディアム Spend A Little Time [Loving The World] は晴れやかでチャーミング、もっと素晴しいのが Just Me And You というミディアムのバラード。イントロ部分は HI サウンドを彷彿させる、マリアンの伸びやかなヴォーカルが深く胸に響き、バックでかすかに男性シンガーがハモッてくれて曲に暖かみが加わっている。2 曲とも Mary の自作、彼女がソング・ライターとしても非凡であったことが分かる。クラシカルなバラード Try では力強く燃えあがり、Get On Back On The Right Track ではリズミックに弾け、サザン・バラード The Colour Of Man ではしっとりと憂いが漂う。話は遡るが、Mary は 1943 年アラバマ州 Selma の生まれ、フロリダの Fort Walton に移り、16歳の頃には地元のクラブで歌っていたという。大学卒業後、教師の道に進むべきか悩んだが、Fred Wesley のバンドからスカウトされ、歌手として夢を追うことに。Fort Walton を中心に近隣の Valparaiso や Panama City で Chuck Cooper や Elmore Morris とともにステージに立っていたところ、Finley Duncan の目にとまったというわけだ。Fort Walton はビーチの町、やはり同じ海岸沿いの行楽地 Panhandle の事業家で地元の名士だったのが Finley Duncan で、Playgroundスタジオも Valparaiso に設立されている。ここで、地理的なことを確認しておきたい。フロリダというとすぐにマイアミが思い浮かぶが、Fort Walton と Valparaiso はフロリダ州の西端、ミシシッピとアラバマに近い場所だ。位置関係などどうでも良いようにも思えるが、サウンドに地域性が色濃いソウル・ミュージックを楽しむ上では、押さえておきたい要素。私は昭文社の 600 万分の 1 のアメリカ地図を片手にライナー・ノーツ等をチェックしているが、なんとなく音のイメージが膨らんでいくような気がする。そんなことで、Finley Duncan もメンフィスやマッスル・ショールズ、ナッシュヴィルのサウンドが大好きだったのだろう。閑話休題 (それはさておき、話を元に戻すときに使う)、娘を1人もうけた後、71 年に Chuck と Mariann は離婚。73年、マッスル・ショールズで成功をつかむべく Mary はフローレンスに転居する。その頃、Terry Woodford とClayton Ivey が Wishbone に新しく Widget スタジオを開設。そこの専属ライターであった Frank Johnson が Mary のフィーリングを気に入り、彼の後押しもあって Wishboneプロダクションと契約、さっそく彼女の LP が制作されることになる。73~74 年にかけてレコーディングされ、11~18 がその LP のための曲だ。10 曲目までと比べると、音が軽やかになっていて、マッスル・ショールズのサウンドの変化が見て取れる。Mary のヴォーカルもしっとりとソフトになっているね。マイ・ベストは、爽やかに舞い歌う I'll Never Let You Walk Alone かな。そこはかとなく胸に沁みるダンシング・バラード。ちょっとテンポを落とした Leaving Me もやるせない。Use Me は Bill Withers のヒット・カヴァー。Thelma Houston も歌っている You've Been Doing Wrong For So Long も泣ける。これとブルーなスロー・バラード I Want To Be Loved は Ann Sexton の LP “ In The Biginning “ (Sound Stage 7) でも取りあげられている曲。これでもかって感じの Ann と比べると、Mary の歌いっぷりはすっきりとさりげない。Sussex レコードからアルバム・リリースが予定されていたが、悲しいことに Sussex の資金難で取りやめになってしまった。シンガーとして花を咲かすことはできず、この頃、Mary は Wishbone で Johnnie Taylor や Denise LaSalle のアルバム制作の裏方として仕事をしていたようだ。ブツとして確認できるのは、David Johnson がプロデュースした Sandra Wright の LP (楽P.248)、バック・コーラスに彼女の名前 (なぜか Mary Graham となっている) がある。ひとつ重要なことを忘れていた。Mary には Jimmy Gresham (楽P.50) という 9 歳上の兄がおり、同じくアラバマの州Selma の生まれ、兵役を終えた後、ウエスト・コーストで The Gibson Kings というバンドを組みミュージシャンとしてスタート。シングル盤も何枚か残し、71 年に Fort Walton に戻っている。兄と妹はいっしょにライブで活動したり曲を作ったり、76 年には、二人で書いた曲を Jimmy Johnson に持ち込み、Mary は何曲かデモ録音をおこなっている。19~24 がこの時のものだ。22 と 24 が Jerry Weaver、他は Jimmy Johnson & Roger Hawkins のプロデュース。本家マッスル・ショールズ・スタジオのバッキング、ホーンが付いていないのが惜しいが、Mary のヴォーカルも生き生きと精一杯、幻の LP に負けず劣らずの内容となっている。圧巻は Annette Snell (楽P.152) の歌声で有名な Promises Are Not To Be Broken であろう。アネッタ嬢の Epic 盤にも M. Gresham と J. Gresham の名前がクレジットされているが、ライターについてはまったく無関心だった。本当に失礼いたしました言いわざるを得ない。不実な男に対する女心を歌ったもの、美しく精気にあふれ、聴くもの全てに希望と至福を与えてくれる。よくぞこんな素晴しい曲を作ってくれたと感謝の気持ちでもう胸がいっぱい。Jimmy Gresham と Harvey Thompson & Cornell Ward が書いた His Love Can Be No Stronger も Promises の残り香が感じられる力強いバラード・ナンバーだ。そして、軽快に歌われた So Many Ways でオシマイ。最後に、蛇足を少し。ライナーは Mary Gresham 自身のインタビューをまとめたもの。読んでいると、インテリジェンスがあって勝気な女性ということが分かり、さらに好きになってしまった。面白く興味深いエピソードも数多く、私のようなスケベ根性旺盛なソウル・ファンならニンマリしてしまうはず。デビュー前のドサ回りでは、ちょくちょく Bill Brandon とも歌ったとか。Stacy Johnson も出演していたバーミンガムのクラブで、プロモーターにギャラを持ち逃げされたとか。Chuck & Mariann vs Peggy Scott & Jo Jo Benson といったライブ・ショウではたいてい自分たちが勝ったよなんて。さらに、69 年には Chuck の母がジョージア州サバナに住んでいたことから、一時期転居。あの Willie Johnson と親しくなり、アトランタで The Khaotis というグループを 3 人で結成し活動していたなんて話も。スリー・ショットの証拠写真も掲載されているから驚いてしまう。72 年に Mary は Cloud Of Love という曲を Barry Becket のプロデュースで録音しているようだが、この音源は見つかっていない。Annette Snell が飛行機事故で亡くなる前日、Promises のバック・コーラス部分を一緒に歌っており、Annette の死は大きなショックだったと悲しい思い出も。82 年に再婚し、音楽ビジネスから一時期身を引いたが、今もフローレンス近辺で歌っているそうだ。バンド名がイグアナ・パーティー だって、凄く変な名前。シンガーとして挫折も多く華やかなスポット・ライトをあびることはなかったが、彼女の場合、シングル・マザーとして子育てもしながら強く健気に生きてきたって感じで励まされる。こんなに素敵な女性に出会えて、音源を発掘した Garry Cape 氏には心からありがとうございましたと言いたい。ディープ、サザン・ソウルを心から愛する人たちの手によって届けられた贈り物、これを無視するようではサザン・ソウル・ファン失格だ。
mary gresham

annette snellAnnette Snell の Sheet Music (楽譜です)。Mary Gresham のインタビューによると、‘Slim’ と呼ばれていたそう。Ann Peebles みたいに痩せていたんだろうね。

南部の女性シンガーということで楽ソウルの補足。
Soul Bag Vol.2 (楽p.264) のところでふれた Vivilore Jordan の You don't need him / Maybe (Mojo 103) のシングルについて存在が確認できないと書いているが、確認できました。
http://
sirshambling.com/artists/V/vivilore_jordan.html 参照
Judy Clay とのカップリングで Veda Brown の Stax 音源が UK Kent からリリースの予定。
http://
diskunion.net/black/ct/detail/54C080610701

先日、楽二郎さんに会ったら、「返レスが無いので淋しい」と。すいません。コメントは歓迎ですので、よろしくお願いいたします。
14:12:58 | もっと楽ソウル | コメント(1) | page top↑
<<楽BOOKS  スタックス・レコード物語 / ロブ・ボウマン | ホーム | 楽CD  THE TRAGAR & NOTE LABELS (NUMERO 020)>>
コメント
--只今、休憩中です。--

座長、ご無沙汰しております。

座長の入魂のコメントに感動して休憩後の業務に支障が出そうです...

また、こうしたシンガーの苦労話やドラマを知れば知るほどソウル・ミュージックを改めて好きだな~なんて思ってしまう私。

話は変わりますが、前回のようにご迷惑はおかけしませんので(申し訳御座いませんでした...)、
次回のソウル・ミーティングには是非、誘ってくださいね。

何卒宜しくお願い致します。

それでは目を腫らしたまま、仕事に戻ります。
by: 『楽』一門 / 門下生 国 立男です * 2008/07/12 15:04 * URL [ 編集] | page top↑
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |