楽BOOKS  スタックス・レコード物語 / ロブ・ボウマン
2008 / 07 / 17 ( Thu )
スタックス・レコード物語 / ロブ・ボウマン著 新井祟嗣訳
(シンコーミュージック・エンタテイメント)
SOULSVILLE, U.S.A. : THE STORY OF STAX RECORDS / ROB BOWMAN 1997

スタックス関連 CD のライナーでもお馴染みの音楽研究家ロブ・ボウマン氏が 1997 年に出版した STAX 研究書。発売してすぐに原書を買っていたのだが、英語力も気力にも欠ける私には読めるはずもなく、待望の翻訳書である。私が ROB BOWMAN 氏の名前を最初に知ったのは、3 枚組 CD “ The Otis Redding Story ” のライナー・ノーツ (鈴木啓志氏訳) であった。しっかりとした取材に基づき語られた OTIS 像、音楽センスの確かさに加え、そこには常に愛情に満ちた眼差しがあり、随分と感銘を受けたものである。本書は客観的な資料の積み上げと歴史のその場にいた人たちの膨大なインタビューによって構成されたメンフィス・ソウルの牙城 「スタックス・レコード」 史。12 年間もの歳月を費やし書き上げられたもの、2 段組で 460 ページ (原稿用紙 1800 枚を超える) と文字もぎっしり。1958 年ジム・スチュアートが STAX の前身 SATELLITE レーベルを立ち上げ、1976 年に様々なトラブルをかかえ破産するまで、メンフィスのインディペンデント・レーベル STAX がたどった激動の 20 年間の軌跡をあますところなく伝えてくれる労作にして名著である。驚くのは正確性、そのこだわりは半端ではない。思い込みや憶測を廃する徹底した客観性ゆえ、記述も力強く説得力がある。さらに、優れた研究書というだけでなく、読み物としても文句なく面白くできあがっている。時を遡り、スタックスに関わった人たちの生の言葉がタイム・マシンとなり、イースト・マクレモア 926 番地にあった古い映画館キャピトル劇場に拠点を構えたマクレモア・スタジオやサテライト・レコード・ショップに我々を誘ってくれる。文章は臨場感にあふれ、「オーティス・ブルー」 の制作現場や名曲 「ホールド・オン」 のアイデアが生まれた瞬間に自分もいっしょに立ち会っているような興奮に包まれる。STAX の独創的なサウンドがいかにして生まれたか、その魔法の種明かしも随所に。私自身は音楽的素養に乏しくて充分には理解できない部分もあるのだが、音に敏感な方や楽器ができる方なら、興味深い示唆と分析になるほどと膝をたたかれるはず。そして、客観性に徹した著者が大好きなソウル・ナンバーについて語るときには、思わず熱くなってくれるのも好感が持てる。耳が良く、曲に対する表現や見方はとても鋭く深い。また、ソウル・ミュージックを音楽文化としてだけでなく、ビジネスの面からもとらえているところも重要だ。音楽産業の過酷さ、ビジネスの厳しさには溜め息が出てくる。内容は詳細を極め、初めて知ることも多く、わくわくするようなエピソードも満載。シングル・コレクターとして気になっていた点も本書で随分とすっきりした。例えば、STAX の関連レーベル HIP や ARCH などについての記載もある。なお、著者が書いている STAX の BOX 3 セットのライナー・ノーツ (本書の2分の1のボリューム) との重複は約15%。レコード解説が趣旨ではないので、1枚1枚のシングル・リリース及び充分に言及できなかったシンガーについてはボックス・ライナーを参照いただきたいとのこと (私は輸入盤でVOL.1しか買っていない、国内盤のライナー翻訳の有無は不明)。著者は言う、本書はレコードよりもそのレコードを生んだ企業の英雄伝説だと。私にとって最も強く印象に残ったのは OTIS REDDING や SAM & DAVE などのシンガーや BOOKER T や STEVE CROPPER といったミュージシャンでもなく、JIM STEWART という人物。ミュージシャンとしてもプロデューサーとしても一流とは言いがたく、商売ベタ。古き良き時代のスタックスを頑固に愛し、経営から外れた後も会社存続のために全力を尽くしたスタックスの創始者である。他にも、上昇志向の優秀なビジネスマン AL BELL、スタックスの用心棒 JOHNNY BAYLOR、スタックスを陰で支えた DEANIE PARKER や ERLIE BILES といった女性たち等々、魅力的な人たちに出会うことができる。STAX のサウンドについて一家言あるという方ならば、絶対に読み逃せない一冊。ただ、読み物としてだけでなく、資料として利用するものとしてはインデックスが無いのがちょっと不便かな。最後に一言、ROB BOWMAN 氏の研究者としての志の高さとソウル・ミュージックに対する愛情の深さに心から敬意を表したい。
stax book
06:37:03 | もっと楽ソウル | コメント(4) | page top↑
<<SOUL 45  The Limitations & The Stingers | ホーム | 楽CD  MARY GRESHAM (UK SOULSCAPE 7008)>>
コメント
----

書籍ですか・・・・
こういうのも読まんといかんですよね。
字が小さいと読むのに苦労するんですが
字は大きいですか?
by: 楽マスク * 2008/07/18 15:58 * URL [ 編集] | page top↑
----

本文は「楽ソウル」並みです。太目のゴシック体なので目に優しい気がします。でも、訳注と脚注はかなり小さいです。アリの行列みたいで、読むのに苦労します。
by: sano * 2008/07/21 21:41 * URL [ 編集] | page top↑
--思いきって--

今アマゾンへ注文を入れちゃいました。
本を買うなんて何年ぶり?図書館でなんでもすませていましたから。
最近久々に60年代のソウルにはまっているんです。オーティス、サム&デイブ・・・P.バラカンさんのラジオ番組でこの本を知ってもう絶対読もうと決意。この記事も大変参考になりました。
so many thanks!
by: レオ * 2008/08/25 13:34 * URL [ 編集] | page top↑
----

HI や GOLDWAX についてもこんな本があると良いのですが。でも、STAX みたいにドラマティックではないので、読み物としてはイマイチかな。
by: sano * 2008/08/27 00:30 * URL [ 編集] | page top↑
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

| ホーム |