RICHARD MARKS
2015 / 05 / 29 ( Fri )
RICHARD MARKS / NEVER SATISFIED (NOW-AGAIN 5116)

1 richard marks cd 1
2 richard marks cd 2
凄い CD アルバムが出てしまった。Richard Marks、楽本では、肝心のシングル盤を持っていなかったので、Bill Wright のところで一言触れただけのアトランタの幻のソウル・シンガーだ。1968 年から 76 年、残したシングルは全 9 枚、うち 8 枚はレア盤、さらに 7 枚はベリ・レア。私の知る限り、これまでコンピレーション等でも紹介されたことが無く、内容もとびっきり、幻たる所以である。この全シングルに、彼のバンドがバックを務めた Buddy Cantrell のシングル両面、さらに未発表曲 2 曲が収録されている。新譜紹介がさっぱりできていない当ブログだが、シングル・コレクター以外には知名度がゼロに近いシンガー、影響力は微力ながら、ここは気合を入れて、このアルバムのプロモーションに一役買わせていただく。
この CD の企画に携わったのがアトランタ在住の Brian Poust さん。貴重な写真等も豊富に掲載された 50 ページを超える冊子付き、採算がとれるのかと心配になってくるくらい立派なものだ。リチャード・マークスご本人は 2006 年に亡くなっており、家族や彼を知っていたミュージシャン達のインタビューをもとに、地元が生んだ忘れられたソウル・マンの足取りをたどっている。愛情や尊敬の念が伝わってくるのはもちろん、音源のデータもしっかりと調べあげられており、資料的にも充実している。まずは、収録曲を整理しておこう。
① The Minors / Funky Fingers (Esprit 2540) 1966
② The Minors / Boom Boom (Esprit 2540) 1966
③ Funky Four Corners * vocal (Tuska 101) 1969
④ Funky Four Corners * instrumental (Tuska 101) 1969
⑤ Crackerjack (Tuska 105) 1969
⑥ I’m The Man For You (Tuska 105) 1969
⑦ Never Satisfied (Tuska 112) 1971
⑧ Did You Ever Lose Something (Tuska 112) 1971
⑨ Buddy Cantrell / You Ain’t No Good (Tuska 104) 1969
⑩ Buddy Cantrell / Why Did You Leave Me ? (Tuska 104) 1969
⑪ Mr Santa Claus (Santa Claus Helping Hand) (Tuska 001) 1970
⑫ Home For The Holiday (Mother’s Wish For Christmas) (Tuska 001) 1970
⑬ Don’t Take It Out On Me (Shout 249) 1970
⑭ Love Is Gone (Shout 249) 1970
⑮ Ups And Downs (Note 7211) 1974
⑯ Living My Life Day By Day (Note 7211) 1974
⑰ Speak Now (SRC 1940) 1975
⑱ Purple Haze (SRC 1940) 1975
⑲ Innocent Bystander * vocal (Free Spirit no#) 1976
⑳ Pretty Woman Pass On By (unissued) 1975
㉑ I’m With You Love (unissued) 1975
1943 年生まれ、高校を卒業後、音楽で身を立てようと田舎から都会のアトランタにやってきたリチャード・マークス、先輩格のビル・ライトに出会ったのが 19 歳の時。ビルはキーボード奏者で既に The Fedells というバンドでプレイ、歌も歌っていた。以来、2 人は親友となる。リチャードはアトランタのクラブでギタリストとして活動、評判も高く、地元の大物ツアー・ミュージシャン Calvin Arnolds (後に西海岸に移り、Venture 等でシングルがある) から誘いもあったようだ。初めてレコーディング・チャンスが巡って来たのが 1966 年、①② は彼が参加していたバンド The Minors のもの。彼のギターと、Charles Terrell (ベース)、Little Joe Bowden (ドラムス)、Hosea Burch (キーボード) が主要のメンバー。このシングルは、地元の音楽ビジネスマン Gordon Boykin のレーベル Espit からリリースされている。ライターとしての才もあったリチャードが書いた曲。歌は無くて、ファンクと言うより、ファンキーなインストゥルメンタル・ソウルだ。その後、レコーディングの機会は無かったが、リチャードとマイナーズは Roy Lee Johnson のライブのバック・バンドなども務め、力をつけていく。転機が訪れたのは 69 年、D.A.Williamson という人物が象印の Tuska レーベルを立ち上げ、③④ のシングルがレーベルの第一弾としてリリースされることになる。JB 系のファンクながら洗練されたサウンド、メジャー・レーベルの目にとまり、Roulette レコードからも再発売されている。最初に珍しくないシングルが 1 枚と言ったのは、この Tuska 盤のこと。日本にも結構入っていて、これだけは持っているというコレクターも多いのではないだろうか。2 枚目からは Tommy Stewart という人物がプロデュースとアレンジを担当。このトミー氏、70 年代アトランタの R&B に深く関わった人物で、Jesse Jones のレーベル Tragar と Note でも仕事をしている。残る Tuska の 3 枚のシングル、作曲はリチャードだが、サウンド面ではトミー・ステュアートの意向が強く出たものだろう。ダウンホームでディープでブルージーなファンク・ナンバーがこれでもかといった按配で、もう真っ黒である。⑤ Crackerjack はずいぶんと自由な感じ、歌はオマケかな、ドラムやギター、ホーンが大活躍、かっこ良さならこれが一番かも。⑥ I’m The Man For You はディープな歌ものファンク、黒さでは一番かもしれない。⑦ Never Satisfied も同一路線、変にキメキメでないところがクール。⑧ Did You Ever Lose Something はスタックス・ライクなアップ・ナンバー、Johnnie Taylor っぽいボーカルで、歌手としてもイケルところをアピールしてくれる。ハッピーな気分でクリスマスを迎えたことが無く、ちょっと力を抜いて録音した感じの ⑪ にもしみじみ。ファンクだけど、⑤⑥ のシングルは欲しかった、⑦⑧ もね。シングル・コレクターもほぼ引退、こうやってちゃんと聴けるありがたみに深く感謝。そして、さらにありがたみが増すのが、⑨⑩ のBuddy Cantrell、どうして違う人の曲が入っているのと思われる方もいるかもしれないが、リチャード・マークスとトミー・スチュアートのコンビ最高最良の成果がこのシングル盤、これが入っているおかげで、本アルバムの価値がさらに高められている。私がどうこう言う必要もないくらいの問答無用盤だ。⑨ You Ain’t No Good はディープでグレートな歌ものファンク、⑩ Why Did You Leave Me ? は極めつけのサザン・ソウル・バラード、女性コーラスも雰囲気を盛り上げてくれる。リチャード・マークスとマイナーズはレーベルのハウス・バンドでもあったようで、こういうのを聴くと、優れたバンドがあったか無いかで楽曲のクオリティーが決まることが良く分かる。両面曲も書いているバディ・カントレルについては全く情報が無く (冊子にポートレイトあり)、シングルもこれっきり、ディープで爆発力のあるシンガー、これで消えてしまったのが惜しまれる。1 枚目で当たりをとった Tuska だったが、以降はメジャー・レーベルの目に留まることもなく、十分なプロモーションもできず、3 年間の活動で終わってしまう。私の知る限り、Richard Marks が 4 枚、Buddy Cantrell が 1 枚、Barbara Hall という女性シンガーが 3 枚、計 8 枚が Taska レーベルの全て。Barbara Hall の 3 枚も気になるところなので、リスト・アップしておこう。
Lookin' For My Baby / Tell Me Tell Me Tell Me (Tuska 102)
Broken Hearted / Big Man (Tuska 106)
Humanity / The Doll (Tuska 113)
3 枚目の B 面は The Minors のインスト・ナンバーのよう。全て聴けているわけではないが、バラードの Broken Heated、ファンクの Big Man はなかなかの出来。Tuska は難しいが、この女性、74 年から 75 年にシカゴのレーベルで 2 枚のシングルがあり、そちらは普通に買える。B 面がハニー・コーンのカヴァーとなる Can I Count On You / V.I.P. (Innovation II 9162)、Sam Dees が曲を書いている You Brought It On Yourself / Drop My Heart Off At The Door (Innovation II 9162) とも、本格派の女性シンガーが好きなら、コレクションの価値あり。
こんなことでもないとコメントを残しておけないシンガーなので、脱線して、すいません。13 曲目以降が Tuska 以外のシングル。⑬⑭ は NY の Shout から 70 年にリリースされている。バート・バーンズの未亡人イレーネがレーベルのレコーディング拠点を NY からアトランタに移したことから、Thomas Fletcher の売り込みで実現したもののようだ。ライナー冊子にいろいろ当時の事情が書かれているのだが、正確に理解できず。マニアックなシングルでコレクターには名の知れているプロデューサーのトーマス・フレッチャーが関わっていることだけで情報提供はご勘弁を。ベリ・レアではないレア盤とはこの Shout 盤、随分前から持っているのだが、久しぶりに聴いて惚れ直した。冷たくしていてごめんなさい。⑬ のストレートなダンス・ナンバーも ⑭ のユニークなサザン・ダンサーも聴くほどに調子も気持ちも良くなっていきます。でも、これもヒットせず、⑦ を最後にレコーディングはしばらく途絶えてしまう。
当時、トミー・スチュアートやビル・ライトとの付き合いもあって、リチャードはライター&ギタリストとして Tragar & Note レーベルでも仕事をしていた。そんな中、アラバマのバーミンガムにあった New London スタジオで 74 年に録音されたのが ⑮⑯ の Note 盤だ。これは 20140831 の当ブログで紹介済みのシングル。苦労して手に入れたこともあって、初めて聴いた時は感激したね。リチャード・マークスの歌の上手さにも感心、一皮むけたって感じだろうか、激渋なボーカルに涙、また涙である。⑰⑱ は NY のマイナー・レーベル SRC からのリリース。⑱ Purple Haze が A 面、ジミー・ヘンドリックスへのオマージュといった感じでサイケデリックなロック・サウンド、リチャードが新たにロック・マーケットに挑戦したシングル。これは NY 在住だった義兄弟の伝手で実現した録音のようだ。そして、B 面 ⑰ Speak Now が素晴しい、前作の流れにあるバラード、さらにサザン・ソウル臭がきつくなっている。NY からアトランタに戻って製作した ⑲ Innocent Bystander はビル・ライトとリチャードが書いた曲、美しく力強いミッドテンポのバラード、ダンサブルでもあり、実に心地よい。南部の豊かなソウル・ミュージックの土壌から 70 年代に花咲いた名品と言っても良いかもしれない。なお、B 面はインスト・ヴァージョン、ビル・ライトも 2 年後にこの曲 (Midtown 106) を歌っている。Tuska 後の 3 枚のシングルも充実した内容だったのだが、巷ではディスコ・サウンドが氾濫、クラブ・ハウスでのライブも減ってしまって、リチャードも 77 年を最後に音楽ビジネスの一線から退いてしまう。残る 2 曲は 75 年に録音された未発表ナンバーだ。ミディアムの ⑳ も良いが、続く ㉑ I’m With You Love に驚いた。このアルバムを最初に聴いた時、この曲だけ何度も何度も繰り返しリピートして随喜の涙を流したものであります。ジョニー・テイラーを彷彿させる歌いっぷり、これまでのバラードには無かった余裕や色っぽさもあって言うこと無し。
後日談を少々。引退後は自動車修理の仕事で働き、音楽は趣味となったリチャードだったが、1983 年にアルバム 1 枚分のレコーディングしており、” Marks Of the Future “ というタイトルでリリースされる目論みもあったらしい。結局、Midtown で I Can’t Stand (Being Alone Without You) と Pretty Woman (⑳ の再録) のカップリングでシングルが 1 枚出たきり、残りの曲はお蔵入りとなってしまった。冊子ライナーによれば、今回の Now-Again のリサーチで、その音源も発掘されている。今後、日の目を見ることがあるのか気になるところ、幸運にも、この音源を聴く機会があり、何曲かは本アルバムにも収録しても良かったんじゃないかなと、Midtown のシングルも見たことが無いし、ベストのバラード I Can’t Stand ぐらいはねじ込んでもらいたかった。
最後に、勝手プロモーション担当としまして、しつこく PR。ディープなファンクやソウルが好きな方なら、このアルバムは絶対に買い。コレクター的価値観から押しているわけではありませんよ。今さらだけど、有名無名なんてのも関係ありません。ちゃんと自分の耳で確かめてほしい。聴く側がしっかりしていないと、音楽の価値がどんどんすり減っていきます。

3 richard marks tuska
プライス・ガイドを見たら、ROULETTE 盤の方が高値でした。
6 richard marks shout a
7 richard marks shout b
今後、さらに人気が出そうな気が。まだ見つかる盤なので、値段が高騰するかもしれない。
4 richard marks note a
5 richard marks note b
我家の家宝

関連CDアルバム
ECCENTRIC SOUL : THE TRAGAR & NOTE LABELS (NUMERO 020)
これも必聴盤、20080707 の当ブログでコメントしているので、そちら参照。楽ソウル 255p から 259p にもアトランタのディープ・ソウル・コンピや Herman Hitson、Lee Moses のアルバムを紹介しています。さらに、ロイ・リー・ジョンスンならこれ。
ROY LEE JOHNSON / WHEN A GUITAR PLAYS THE BLUES (BEAR FAMILY BCD 16321 AR)
20090514 の当ブログでコメントしています。
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