楽 CD  THE FANTASTIC FOUR (KENT)
2015 / 09 / 10 ( Thu )
THE FANTASTIC FOUR / THE LOST MOTOWN ALBUM (KENT CDTOP 434)

01 fantastic four lost motown album a
02 fantastic four lost motown album b
「ファンタスティック・フォー、最高ですね」、このところ、挨拶がわりの決まり文句だ。幻のセカンド・アルバム “ How Sweet He Is “ (SOUL SS-722) 12 曲にボーナス・トラック 13 曲を加えた全 25 曲、Dennis Edwards、Patrice Holloway、The Contours、Marv Johnson、The Monitors 等々いずれも驚きの Kent モータウン発掘に新たにグレイトな CD アルバムが加わった。モータウン・ファンだけでなく、グループ・ファンも必聴必携、マーヴィン・ジュニア級の James Epps のディープ・ボイスが高らかに響き渡り、ディープ・ファンだって大興奮、早い話、ソウルが好きだと自覚している人には洩れなく聴いていただきたい素晴しい内容だ。
収録曲を整理すると、①~⑫ が幻のアルバム曲、うち 5 曲 ②⑥⑦⑧⑨⑩ がシングル・リリースがあったもの、うち 3 曲 ①③⑥ は既に CD 化されている未発表曲、新たな未発表曲は ④⑤⑪⑫ の 4 曲。⑬~㉕ がボーナス曲、⑮ はシングル曲、⑯⑱ は既にCD化されている未発表曲、新たな未発表曲がなんと ⑬⑭⑰⑲⑳㉑㉒㉓㉔㉕ の 10 曲。1968 年 12 月から 1971 年 3 月までの間に録音されたものだ。SOUL の 3 枚のシングル両面に加え、これまで各種 CD に収録された未発表曲も余すところなく収められており、モータウンにおけるファンタスティック・フォーの全てがこの 1 枚につまっている。
まずは、1970 年 3 月に予定されていたアルバム、まさに怒涛の 12 曲、このクオリティの高さは尋常ではない。正式のリリースがあれば、モータウン屈指の名盤となったに違いない。仮タイトルの “ How Sweet He is “ の “ Sweet “ はリード・シンガーの James Epps のニックネーム。モータウンは、デニス・エドワーズと同じく、ジェイムズ・エップスをソロ・シンガーとして押し出す意図があったようだ。耳のあまり確かでない私でも、この人の声は聴いて直ぐに分かる。深いニュアンスがあって、うま味成分が豊富、そこがスウィートと呼ばれる所以なのかもしれない。先にマーヴィン・ジュニアを引き合いに出したが、パワフルなんだけど繊細さもあり、David Ruffin と Jimmy Ruffin の魅力を併せ持った感じかな。それにしてもこの 12 曲。HDH も去り、モータウンも変革の時期、定まったプロデューサーもおらず、ライターも様々なれど、中途半端な曲が無いのが凄い、ビートルズの ⑤ までもがまことにソウルフルなのだ。とりわけ ⑦⑧⑨⑩ とシングル曲の四連発は圧巻、マイ・ベストは ⑧ Don't Care Why You Want Me、深く優しく、胸にジワジワ沁み渡るバラードだ。ちょっと勇ましい ⑩ I Feel Like I'm Falling In Love Again もデトロイトらしいナンバーで大好き。⑦ は 4 分弱のロング・ヴァージョンというのも嬉しいではありませんか。そして、シングル曲に引けを取らない、もしくは凌駕してしまいそうなのが ①④⑫ の 3 曲だ。① Take Him Back If It Makes You Happy はジェイムズ・エップスの独壇場といった感じのミディアム・アップ、バリノの “ I Had It All “ 同様、LPの価値を決定づける幕開けの曲だ。初めて聴く ④ A Little Too Much がさらに素晴しい、最近センチな私にはこれが未発表ではベストかな、泣けるフレーズが堪らない、耳よりも目頭が強烈に刺激される。⑫ Just Can't Forget About You Baby のライターには目を疑った。フィラデルフィアの Kenny Gamble と Billy & Jerry のバトラー兄弟ではないですか。歌いっぷりが熱い、デヴィッド・ラフィンに引けを取らないハイ・テンション、ジェイムズ・エップスが男前でスマートだったら、デニスの代わりにテンプスに加入していたかもしれないなんて想像してしまった。③ は Marvin Gaye & Tammi Terrell (Tamla 54161) のカバー、ロマンティックなバラードだ。⑥ Keep On Tryin' ('Til You Find Love) はフォー・トップスやジミー・ラフィンが得意とするような弾けるナンバー、これも文句無し。⑪ You Turn Me Around はデニスのテンプスみたい、こんなのもやすやすと歌ってしまうところが偉いのであります。
残るボーナス曲も勿論濃ゆい。私が分かる範囲で他のシンガーも歌っている曲をチェック。⑱ Don't Tell Me I'm Crazy が Edwin Starr (Soul 35100) と Gladys Knight & The Pips (LP Soul 744)、㉒ I'm Still A Struggling Man が Edwin Starr (Gordy 7087)、㉓ Forgive My Jealousy がChuck Jackson (LP Motown 667)。きりりと力強いエップスのボーカルが光るミディアムからアップの曲が目白押し、ジョニー・ブリストルが曲を提供している軽快なテンポの ⑬ How Big Is Your Heart、流石のシングル曲 ⑮ Pin Point It Down、切々とした ⑯ Loving You (Is Hurting Me)、実直なボーカルに涙の ⑱ Don't Tell Me I'm Crazy、晴れやかな ⑳ In A Bad Way、コーラスのサポートも心強い ㉓ Forgive My Jealousy あたりがとりわけ印象に残る。最後の録音となった ⑭ It Keeps Raining Down Tears も絶品。慈しみに満ちた美しいバラード ㉑ I Hate Myself For Loving You も忘れちゃいけないな。なお、⑭⑰⑳ のプロデュースに名前のある Al Kent は Ric Tic の作品を手掛けていた人物で、モータウン退社後のファンタスティック・フォーの面倒も見たお方であります。
いつもながら KENT さんに感謝、さらにガメツク、①~⑫ を是非アナログ LP で、無理を承知、レーベルもオリジナルの SOUL のデザインでお願いしたいですよね。
03 fantastic four soul 35058 i feel like im falling in love again
04 fantastic four soul 35065 dont care why you want me
05 fantastic four soul 35072 on the brighter side

ここで、SOUL 以前のファンタスティック・フォーについてもコメントしておかなくてはいけない。
66 年 12 月、Ed Wingate の Ric Tic からデビュー。翌年 11 月、3 枚目のシングル The Whole World Is A Stage (Ric Tic 122) がチャート 6 位のヒット、Ric Tic がモータウンに買収される 2 年足らずの間に同レーベルで 10 枚のシングルを発表している。これは Edwin Starr を上回る枚数、ヒットした曲も多い。モータウン移籍後も Ric Tic のシングルをまとめたファースト・アルバム “ The Best Of Fantastic Four “ (Soul 717) が早々にリリースされ、順風満帆に思われたが、セカンド・アルバムの企画も頓挫、結局、3 枚のシングル盤 (Soul のシングルは 4 枚だが、1 枚目は Ric Tic のラスト・シングルの再発) もヒットせずに終わっている。大企業に吸収合併された中小企業の優秀な人材が冷飯を喰わされたといった例えが適当かどうかはともかく、モータウンも曲がり角にあった時期、充分なプロモーションもされず、モータウンを去ることになる。
話は戻り、” The Best Of Fantastic Four “ (Soul 717)に収められなかった Ric Tic 音源がある、以下の7曲だ。
06 fantastic four 119 girl have pity
① Girl Have Pity (Ric Tic 119) 66.12
07 fantastic four 119 live up to what she thinks
② Live Up To What She Thinks (Ric Tic 119)  66.12
08 fantastic four 122 aint love wonderful
③ Ain’t Love Wonderful (Ric Tic 122) 67.2
09 fantastic four 134 as log as the feeling
④ As Long As The Feeling Is There (Ric Tic 134) 67.7
10 fantastic four 136 love is many-splendored thing
⑤ Love Is A Many Splendored Thing (Ric Tic 136) 68.1
11 fantastic four 137 no love like your love
⑥ No Love Like Your Love (Ric Tic 137) 68.2
12 fantastic four 139 win or lose
⑦ Win Or Lose (Ric Tic 139) 68.4
デビュー・シングルの ①② は私の長年の愛聴盤だ。思い詰めた感じの甘いバラード・ナンバー ① Girl Have Pity、ジェイムズ・エップスの哀愁をたっぷりと含んだボーカルに涙である。一方、② Live Up To What She Thinks は格調の高いデトロイト・ミディアム、プロデュースを担当しているのが、若き日の George Clinton で、アレンジは彼らの作品の多くを手掛けている Mike Terry だ。さらにテンポを上げた ③ Ain’t Love Wonderful、サビのメロディーがなんともチャーミング。曲のクレジットにある Al Hamilton は Al Kent の本名で、MGM や Wingate にシングルのある Ronnie Savoy (Eugene Hamilton) は彼の兄弟にあたるそうだ。パーカッシブなミディアム ⑥ No Love Like Your Love も大好き、ライトでファンクなバック・サウンドにも注目したい。
残念ながら、これらの曲には正規の CD イシューがない。Ed Wingate の音楽ビジネスを買い取ったモータウンは、ウィンゲイトのゴールデン・ワールド・スタジオをモータウンのセカンド・スタジオとして利用する一方、ウィンゲイト所有の Golden World、Wingate、Ric Tic の 3 レーベルは継続せず、ファンタスティック・フォーでアルバムを 1 枚、エドウィン・スターについてはファースト・アルバム Soul Star (Gordy 931) に Ric Tic 作品を何曲か収録したのみ。69 年、イギリスの Tamla-Motown から “ Ric-Tic Relics “ というコレクション・アルバムが 1 枚出ており、J.J.Barnes の 5 曲、Laura Lee のデビュー曲、エドウィン・スターが追加で 3 曲聴けるものの、残るタレントと音源はきれいさっぱりと切り捨てられている。現在のところ、Golden World と Wingate はまるまる、Ric Tic の過半、CD リイシューがなされていない。気配も全く無いので、ウィンゲイトの台頭にいまいましい思いもあったベリー・ゴーディが、これらの音源のマスターを破棄してしまったと疑いたくなるぐらいだ。
13 ric tic relics 1 a
14 ric tic relics 2 a
正規イシューは無いが、怪しい CD リイシューはあって、メイドイン台湾の “ Ric-Tic Relics Volume I & II “ (Soul World 103 & 104) で、①②④ の 3 曲が聴ける。

Motown 退社後、Armen Boladian の Westbound に移籍、Eastbound から以下の 2 枚のシングルを発表、Ric Tic、Soul に続きデトロイト最高のグループ・ソウルが楽しめる。
① If You Need Me, Call Me / ② If Had The Whole World To Choose From (Eastbound 609) 73
③ I Believe In Miracle / ④ I’m Falling In Love (Eastbound 620) 74
15 good all over 1
" Good All Over / Rare Soul From The Westbound Records Vaults 1969-1975 " (Ace/Westbound CDSEWD 154) には、①③④ の 3 曲が収録。30 年近く昔の話なれど、P-Vine のコレクション LP “ From Detroit Comes Sweet Soul “ (PLP-6078) には全曲収録されていましたね。75 年以降、Westbound から 4 枚の LP を発表、こちらも久しぶりにじっくり聴いてみようと思っている。

《おまけ》 この機会に、レコード番号が欠盤になっているモータウンの幻のアルバムをチェックしてみた。今回のファンタスティック・フォーのように遅ればせながらCDアルバムとしてリリースされたものでは以下の3枚がある。
David Ruffin / David (Motown 733)
Marvin Gaye / At The Copa (Tamla 273)
Sisters Love / With Love (Mowest 109)
未だ欠盤のままの幻のアルバムについて主なものを挙げると、
Barbara Randolph / I Got A Feeling (Soul 712)
Kim Weston / Take Me In Your Arms (Gordy 934)
Marv Johnson / Marv (Gordy 937)
Martha Reeves / Martha Reeves (Gordy 960)
Dennis Edwards / Dennis Edwards (Gordy 978)
The Velvelettes / Velvelettes (VIP 401)
Mary Wells / Second Time Around (Motown 612)
Downbeats / Introducing the Downbeats (Tamla 225)
Barrett Strong / Money and Other Big Hits (Tamla 226)
Miracles / The Miracles Sing Modern (Tamla 234)
Marvin Gaye & Kim Weston / Side by Side (Tamla 260)
Brenda Holloway / Hurtin' and Cryin' (Tamla 263)
G.C. Cameron / 7th Son (Mowest 107)
デニス・エドワーズ、ヴェルヴェッツ、マーヴ・ジョンソン、ブレンダ・ホロウエイ、ダウンビーツ (エルジンズ) 等、ほとんどの未発表音源は ACE / KENT で既に CD 化されたようにも思えるが、Barbara Randolph と G.C. Cameron は気になりますね。
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