JOHNNY ADAMS
2016 / 03 / 10 ( Thu )
楽 SOUL で絶賛した Pacemaker のシングルも CD で聴けるようになり、何となくホッとしている今日この頃。Ric & Ron のシングルを完全収録したアルバムも 1 年前に出ているし、語り足りない Johnny Adams について、楽本の補足をさせていただきます。

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Johnny Adams / I Won’t Cry – The Complete Ric & Ron Singles 1959-1964 (ACE CDCHD 1424) 2015
楽 SOUL では 14 曲入りの Rounder のアルバムを紹介したが (283p)、この ACE 盤は Ricの 9 枚と Ron の 2 枚計 22 曲を完全収録。きちんと発表順に収録されているのも好感が持てる。① から ⑱ が Ric のシングルで 1959 年から 62 年のリリース、清々しくおおらかに歌われたニューオリンズの R&B に心が洗われる。テンダーなバラード・ナンバーが多く、アーリー・ソウル好きなら優しい気分に浸れること間違い無し。① I Won’t Cry と ② Who You Are はジョニー 27 歳の第 1 作、曲を書いている Dorothy La Bostrie はあまり乗り気でなかった彼に強くレコード・デビューを勧めた女性で、Irma Thomas の最初のシングル Don’t Mess With My Man / Set Me Free (Ron 328) も彼女の作だ。バラードでは、①、⑥、⑭ が大好き、⑥ Teach Me To Forget は Ric のマイ・ベストかな。⑨ は Gene Allison で有名な曲、同様にストリングスが入った ⑩⑪ あたりはちょっと苦手。⑬ は Chris Kenner が歌って大ヒットしたダンス・ナンバー、私はこっちの方が断然好き。⑮ A Losing Battle は最初の全国ヒット、ニューオリンズならではセンチメンタリズムに酔うディープでちょっとブルージーなバラード・ナンバー。ミディアムの ⑯ も格別、Lattimore Brown なんかと共通する歌いっぷりの良さがある。
⑲ から ㉒ が Ron のシングルで 1964 年のリリース、少し趣が変わり、曲に陰りが歌に力強さが増してくる。⑲ Lonely Drifter も良いが、ど真ん中の剛速球バラード ⑳ I Want To Do Everything For You がとどめを刺す。Hank Williams のカバーで Wardell Quezergue がソウルフルにアレンジした ㉒ Cold Cold Heart も後半の絶唱が素晴しい。㉓㉔ は Ric の未発表曲、既に From The Vaults Of Ric & Ron Recordings / Rare and Unreleased Recordings 1958-1962 (Ace/Rounder) という限定 1500 セットの 10 枚組シングル・ボックスに収められていたものだ。
ライナー・ノーツも充実、漏れの無い至れり尽くせりのこの CD アルバム、60 年代前半のニューオリンズのソウルを知るうえでは、アーマ・トーマスやバーバラ・リンと並びベーシックな音源、食わず嫌いで手を出していないというのなら勿体ない、絶対のお薦めです。
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Johnny Adams / I Won’t Cry (audition) (Ric Records 1002)
シングルのボックスに収められていたもう 1 枚。デビュー曲のデモ録音で、バックは Edgar Blanchard のギター 1 本。歌い始めると、なんだかサム・クックぽくて、少し驚いた。暖かみがあって、シングル・バージョンとはまた違った味わいだ。「ボックスは買ってないって」、でも、安心してください、You Talk Too Much / The Ric & Ron Story Volume 1 (Ace CDCHD 1390) にも収録されましたよ。ウラは Who Are You (audition) – My Baby Done Closed The Door (audition)、こちらはまだ CD 化されていないようだ。
そして、Ain’t It The Truth ! / The Ric & Ron Story Volume 2 (Ace CDCHD 1416) では、さらに素敵な未発表曲 How Come And Why (demo) に出会える。デモ録音だけど、これは必聴。ギターのみのバックがかえって味わいを深めているような気が。長めの語りもあるミディアムのバラード。全く力むことなく軽々と歌っているのに、何故だかどんどんジンジンと沁みてくる。実に奥深いソウル・フィーリング、あらためて凄いシンガーであることを思い知らされる。なお、このコンピ、先のボックスに収められていた Barbara Lynn のデモ録音 2 曲 (1 曲は You’ll Lose A Good Thing のアンサー・ソング) も収録。

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Johnny Adams / I Want To Do Everything For You (Ron 995) 1964
楽 SOUL 4p 参照。プロデューサーには Ric & Ron のオーナー Joe Ruffino の名前が、ライターに並んで名前のある Dolores Johnson は Eddie Bo のペン・ネーム (奥さんの名前) だ。ホーンも前面に出て音が厚い、テンポも良く、歌にも気持ち良くコブシがきいている。間違いなく、ジョニー・アダムスの 60 年代前半の最高傑作なのだが、ラフィーノは 62 年に心臓麻痺で亡くなっており、どういう経緯で、リリースされたのか疑問だった。レコード番号もおかしい、Ron の 300 番代は 61 年の Warren Lee (Ron 345) が最後、Ric も 63 年に Tommy Ridgley が 2 枚 (Ric 993 & 994) リリースされたのが最後、番号のみジョニー・アダムスの 2 枚のシングルが引き継いでいる。
楽 SOUL ではちょっと曖昧だった Ric から SSS International の間のディスコ・グラフィーについて整理しておこう。
① I Believe I’ll Find Happiness / I Brought It All On Myself (Watch 6330) 1963
② Some Day / Part Of Me (Watch 6333) 1963
③ I’m Grateful / Going To The City (Gone 5147、Dynamics 1101) 1965
④ A Place Called Home / Spunky Onions (Pacemaker 240) 1965
⑤ Sometimes A Man Will Shed A Few Tears Too / When I’ll Stop Loving You (Pacemaker 249) 1965
⑥ Let Them Talk / Operator (Pacemaker 255) 1965
⑦ Got To Get Back To You / Time And Time Again (Watch 1903) 1968
⑧ Release Me / You Made A New Man Out Of Me (Watch 1906) 1968
Ron 995 & 996 の 2 枚は ② と ③ の間にくる。Watch はジョー・ラフィーノの義理の兄弟 Joe Assunto のレーベル。先の CD ライナーでは、Ron の 2 枚と Watch の ①② は同じセッションのもので、アサントがレーベル名を借りてリリースしたものと説明されている (ホンマかいな、同じセッションというのは Ron の 2 枚だけを指すのかもしれないが)。これまで聴けなかった Pacemaker の 6 曲のうち 4 曲は KENT で CD イシューされた (20160114参照)。⑧ は SSS International で再発売されヒットしている。

ここで、Watch の音源が収録されている CD コンピがあるので紹介。
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New Orleans Soul ‘60’s - Watch Records (Mardi Gras 1047) 2000
シングルは見つけにくいレーベルなので、貴重なコンピレーション、ここでしか聴けない曲がほとんど。Watch はアサントと Henry Hildebrand Jr が 1963 年にスタートさせたレーベル、アール・キングやワーデル・ケゼルグがスタッフとして作曲やアレンジ、プロデュースに携わっている。一番手のシンガーはジョニー・アダムスで、本コンピでも 6 曲が彼の曲。これで全部聴けるかと思ったら、⑥⑫⑱ は SSS でもリリースされており、early Watch の 4 曲のうち 3 曲のみ収録というのが少し残念だ。⑯ Some Dayはリズム・ナンバー、⑳ Part Of Me と ㉖ I Believe I’ll Find Happiness は テンダーでセンチメンタルなスロー・バラード。アサントの好みなのか、バックの演奏が少しカントリーっぽくて、ボーカルもファルセットを強調、ヒットした Release Me や Reconsider Me につながるサウンドと言えるかもしれない。このコンピの目玉はまだあって、当ブログ 20141204 で紹介した Dell Stewart が 4 曲 ⑦⑬⑰⑲ 収録されており、⑰ Didn’t I Tell You (シングルはドント) はディープ・ソウル・ファンなら悶絶もの、昨日まで教会で説教していたようなお声にうっとりしてしまうはず。それに、The Crescents というオブスキュアなグループの ①㉓ もリード・ボーカルが激辛なので気に入ってもらえるのでは。他は、プロフェッサー・ロングヘアーが 5 曲 (⑤ Big Chief の完全版は最高、後半ほんのちょっと歌っているのはアール・キングです)、ニューオリンズ・レジェンド Tommy Ridgley は関連の Johen のシングル両面、地元の中堅シンガー Benny Spellman が 4 曲、Raymond Lewis が 2 曲収録されている、ここら辺は R&B なのでソウルしか聴かない方には今一かもしれない。おっと、忘れるところでした。武骨な男たちに交じってひっそりと歌われている ⑩ Leona Buckles / I’m Waiting (To Give My Love To You) がなんとも言えず良い、可憐なボーカルにおじさんのハートもわしづかみなのであります。またまた脱線してしまったが、この CD コンピ、まだ通常価格で入手可能なようです。

08 johnny adams gone
Johnny Adams / I’m Grateful (Gone 5147) 1965
楽 SOUL 5p 参照、私は持ってないが、Dynamics がオリジナル、何故にデトロイトなのかは分からない。Roulette の配給が決まり、傘下の Gone からナショナル・リリースされた。CD リイシューされていないが、シングル盤は手に入れやすいはず。曲を書いている Eddie Bo がプロデュースしたものだろう。フリップの Going To The City はタイトルとは裏腹にまだまだ田舎臭いダンス・ナンバー、男性コーラスをバックに余裕の歌い回し、けっこう楽しいです。
09 johnny adams a few tears
Johnny Adams / Sometimes A Man Will Shed A Few Tears Too (Pacemaker 249) 1965
楽 SOUL 5p 参照。昔昔、とあるところで Tim Brown 氏にこのシングルがトップに載っていた私のWants List を見せたら、彼も HIS BEST と言っておりました。なお、ウラの When I’ll Stop Loving You はまだ CD イシューされていない、元気の無い Ben E. King 調と言ったら、内容が伝わるかな。
10 ohnny adams got to get
Johnny Adams / Got To Get Back To You (Watch 1903) 1968
「なんぼかいいんでないかい」、今回、改めて聴き直して、ぐいっと評価を上げたシングル盤、両面、シングルでしか聴けません。力強いバラード・ナンバー、63 年の Watch 盤と比べると、甘さも無くて、ドラマティックで男臭い。バックのホーンと女性コーラスが気分を一段と盛り上げてくれる。ウラのブルース Time And Time Again はゆったりファンキー、こちらも粘っこく伊達な歌いっぷり、両面文句無しです。

続いて、SSS International 以降の音源で私が良く聴いている CD を 2 枚、簡単に紹介します。
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12 johnny adams released 2
Johnny Adams / Released (Shout RPMSH 219) 2001
SSS の音源を中心に編まれたもの。ライナー等に音源の出所が明記されていないので、参考までにリリース年とレコード番号を挙げておくと。
①② 68 Watch 1906、SSS 750 ③ 69 SSS 780 ④ 59 LP SSS#5、Ric 961 ⑤ 70 SSS 809 ⑥⑦ 69 SSS 770 ⑧ 71 SSS 831 ⑨ 70 SSS 797 ⑩ 69 SSS 787 ⑪ 69 LP SSS#5 ⑫ 69 SSS 787 ⑬ 62 LP SSS#5、Ric 986 ⑭ 74 SSS 873 ⑮⑯ unissued ⑰ 78 LP Hep’Me 158 ⑱⑲ 76 JB’s 1175 ⑳ 76 JB’s 1176 ㉑㉒ 77 Hep’Me 137 ㉓ 79 Hep’Me 147 ㉔ 80 Paid 117
④ は再録バージョン (SSS 809) ではなく、SSS の LP に収録されたオリジナル・テイクで ⑬ もRic 音源。⑮⑯ は P-Vine の編集アルバム (後述) にも収録されていた当時未発表曲だ。SSS のシングルは全部まとめて聴きたいところだが、選曲も良く、とりあえず 1 枚でジョニー・アダムスを知るには格好のアルバムだろう。JB’s (ジェイムズ・ブラウンとは無関係) も Hep’Me も 75 年からジョニー・アダムスのプロデュースを手掛けている Senator Jones のレーベル、プロデューサーは変われど、SSS の頃とさほどサウンドに変化はない。なお、未発表曲 ⑮ You Can Depend On Me はディープ・シングル・コレクターには Steve Dixon (Spotlite 101) で有名なサザン・ソウル・バラード (当ブログ 20140831 参照)。スティーヴ・ディクソンも Kent のコンピ Back To The River (KENTBOX 18) に収録されたので、ぜひ聴き比べていただきたい。なお、⑳ のオリジナルは The O’Jays、一緒に歌っているのは Charles Brimmer です。欲を言えば、I'm Afraid To Let You Into My Life (Paid 117) も入れていただきたかったかな。
Johnny Adams / Chasing Rainbows (Shout D36) 2007
14 johnny adams tam canary 1
15 johnny adams tam canary 2
副題が The Tan Canary (褐色のカナリア). New Orleans Soul 1969-1981。先のベスト CDを補完するもの。2 枚組で 32 曲収録。Disk One の ① から ⑩ が、ジャケットにもなっている 78 年の After All The Good Is Gone (Ariola) のアルバムそのまんまで曲順も同じ。Disk Two の ① から ⑩ が、76 年のカバー・アルバム Stand By Me (Chelsea) の全曲。2 枚ともセネター・ジョーンズのプロデュース。残る 12 曲は先の CD に収められなかった SSS 作品や Hep’Me 音源が収録されている。SSS もこれで 8 割くらいカバーできる。マイ・ベストは Toussaint McCall の Disk Two ⑥ Nothing Takes The Place Of You、これはシングル・カットがないのが残念だ。
13 johnny adams i want to walk
Johnny Adams / I Want To Walk Through This Life With You (SSS 809) 1970
SSS のベスト・バラード。お値段も安く、ディープ・ソウルのシングル盤の中で最もコスト・パフォーマンスの高いお皿かもしれない。イントロのギターがえげつない、曲も抜群、バックもいつになく重厚だ。

P-Vine の日本編集アルバムに収められていた SSS の未発表曲についても書いておこう。
16 south side of soul street
Johnny Adams / South Side Of Soul Street (P-Vine PLP 302) 1986
以下 6 曲が SSS の未発表曲。
A5. I’ve Got Too Much To Lose
B4. I Have No One - Big John Hamilton (Minaret 129) の曲
B5. Let Me Be Myself
B6. You Can Depend On Me
B7. Too Much Pride - Phil Colbert (SSS 703) の曲
B8. The Tender Side Of Me
69 年から 71 年の録音、いずれもリリース曲に勝るとも劣らない、レベルが高すぎ、他にも未発表がないのか気になってしょうがない。B5 と B6 は先のCDアルバムにも収録、Collectables のベスト盤 Reconsider Me: Golden Classics Edition には A5 と B5 を除く 4 曲が収録されている。

Modern 1038 & 1044 の Johnny Adams、The Huck Daniels Co. featuring Johnny Adams (Kent 4573)、Fifefox featuring Johnny Adams (Kent 4578) は別人。71 年から 73 年、Atlantic に在籍、4 枚のシングルを発表しているが、なんだかアトランティックはこの人らしくなくて、コレクションも 2 枚しかないし、ここではパスさせていただいた。

1982 年に Rounder に移籍、その直前にリリースされたシングルを紹介して終わりとしたい。
17 johnny adams gamma
Johnny Adams / Sharing You (Gamma 101) 1981 or 82
セネター・ジョーンズ最後のプロデュース作。先の Watch 同様、遅ればせながら惚れ直したシングル盤。ジョニー・アダムスでは片手に入る傑作。5 本の指の中では最もシンプルなつくり。美しいギターの音色をバックに歌われる真心たっぷりの一節一節がまことに愛おしい。タイトルが気になって、調べるまで気づかなかったのが情けないが、66 年の Mitty Collier (Chess 1953) の曲、そこで、ミッティー様と聴き比べ、まさに感動の 2 乗、涙がちょちょ切れそうであります。
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