楽BOOKS  魂 (ソウル) のゆくえ / ピーター・バラカン
2008 / 08 / 31 ( Sun )
barakann.jpg魂 (ソウル) のゆくえ / ピーター・バラカン (アルテスパブリッシング)  2008.4.18発行

「佐野さんって、ソウルについて詳しいですね」 と言われることがある。これにはどういうリアクションをとってよいのか困ってしまう。実を言うと、まったくソウルについて詳しくないから。「マニアックですね」 とか 「あんたも好きね」 と言われりゃ、すんなり反応できるのだが。私は 56 年の生まれ、最初に音楽っていいなと感じたのは中学生になりラジオを熱心に聴くようになってからだが、周りにいたのはロック少年やフォーク青年ばかりということもあって、当時のソウルのヒットやブラック・ミュージックの流れについて全く実感がない。高校まではもっぱらエアチェック、大学に入ってバイトのお金でやっとレコードを買うことができた。とにかく 60 年代の音楽が好きで好きで、その頃の洋楽ポップスや歌謡曲ばかり聴いていた。ソウルやゴスペル、ブルースに興味を持ったのは就職して東京に来てから、ソウルのシングル盤を最初に買ったのも 83 年頃だったと思う。その後、シリアスなソウル・ファンになったけど、好きなのは 64 年から 73 年頃の 10 年間の音、それ以降のものも聴かないわけじゃないが、60 年代の流れにあるサウンドに限られてしまう。ということで、70 年代の Curtis Mayfield や Stevie Wonder、それに Sly とかあまり聴いていないし、いわゆるファンク・バンドについても疎い、ラップやヒップ・ホップにいたっては全く意味不明といった状態だ。前置きが長くなったが、ここで、このピーター・バラカンさんの 「魂 (ソウル) のゆくえ」 にたどり着く。89 年に新潮文庫から出ていたものを大幅に加筆した改訂版。自費出版したり、ブログもやり始めたので、ソウル・ミュージックの流れを復習し不得意分野も克服したいと思って読んでみることにした。ソウルの教科書と言っても良い内容で、ゴスペル、R&B、ソウル、ファンク、ヒップ・ホップという流れでソウル・ミュージックの歴史がとてもまとまりが良く丁寧に書かれている。後半部分は無知な分野なので、私もなるほどと勉強させていただいた。バラカンさんは 51 年生まれで私の 5 歳上、子供の頃から同時代でソウル・ミュージックに接していて、自らのソウル体験もベースにしながら楽しく書かれている。専門家でありながら分かりにくい用語など使わず、文章も品があって平明。個人的には、好みをもっと出してくれたほうが面白かったという気はするが、本の趣旨から遠慮気味、控えめで理性的なお人柄なのだろう。ソウルは最も解放される音楽、だからもっと多くの人たちと分かちあいたいという筆者の思いがとても素直に伝わってくる。音楽評論家ではなく音楽愛好家だという姿勢も揺るがない、前書きでは、「ごくわずかの例外を除けばソウル・ミュージックは 70 年代半ばに終わってしまったと言っていいと思います」 と言っているので驚いた。まぁ、同感ですね、それはソウルに限らず、どのジャンルの音楽についてもあてはまる事だと思うけど。音楽を供給する側の変化だけじゃなくて、需要側の都合、音楽の楽しみ方や好みも大きく変わってしまったということもあるだろう。話は脱線するが、以前勤めていた会社で私の後輩がスゴイ音楽ファンだって言うから、ちょっと期待して何を聴いているのかって聞いてみたら、某 J ポップの歌手の名前が真面目に返ってきた。カラオケ・ファンと音楽ファンが同意語になりつつある。自分が嫌いなものや良さが分からないものについて、どうこう言うのは好きじゃないけど、こいつは殴ってやりたくなった。音楽が駄目になったのは人間が駄目になったからではないかな。さらに、そこにつけこんだり助長したりする動きもあるから厄介。何でもいいじゃない売れればといった態度でソウルという言葉を扱う輩もいるから困ったものだ。これでは、ソウル・ファンなど増えるはずがない。ジャンル分けとか意味がなくなって音楽はクロスオーヴァーしているけど、SOUL は特別な音楽であり、特別な意味のある言葉。そういった点でも、バラカンさんのような著名で信頼の置ける人がこのような本を書いてくれていることに感謝したい。私の周りのソウル・ファンでこの本を話題にする人はいないし、このブログ見ている人もほとんどそうかもしれない。皆、既にソウルにどっぷり浸かっているからね。でも、なんとなくソウルが好きだという方がいらっしゃるなら、悪い道に迷い込まない前にご一読をお奨めしたい。
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