楽CD  THE COMPLETE TY KARIM (KENT CDKEND 308)
2008 / 12 / 10 ( Wed )
THE COMPLETE TY KARIM : LOS ANGELES’ SOUL GODDESS (KENT CDKEND 308)

1. Lighten Up Baby (Car-A-Mel 1677) 2. Help Me Get That Feeling Back Again [as Towana & The Total Destruction] (Romark 102) 3. Ain't That Love Enough # 4. Only A Fool (Roach 101) 5. All At Once (Romark 101) 6. Lightin' Up (Romark 104) 7. Don't Let Me Lonely Tonight (Romark 104) 8. Wear Your Natural Baby [as Towana & The Total Destruction] (Romark 102) 9. You Just Don't Know (Romark 103) 10. You Really Made It Good To Me (Romark 101) 11. I Ain't Lying (Roach 101) 12. Take It Easy Baby # 13. Don't Make Me Do Wrong # 14. Keep On Doing Whatcha' Doin' Pt. 1 [as Ty Karim & George Griffin] (Sheridan House 78002) 15. Keep On Doing Whatcha' Doin' Pt. 2 [as Ty Karim & George Griffin] (Sheridan House 78002) 16. Natural Do aka Wear Your Natural, Baby # 17. I'm Leavin' You # 18. All In Vain (Romark 103) 19. After Your Love Has Gone # 20. All At Once [alt vocal] # 21. Lighten Up Baby [alt vocal] # 22. If I Can't Stop You [I Can Slow You Down] # 23. It Takes Money #
# unissued 2008 Notes : Ady Croasdell

女性の声って、とても気になる。私の好みでは、女優なら鶴田真由さんかな、あの声で耳元で囁かれたらと想像すると、確実に心身ともに変な感じに。ソウル・シンガーでは、Fame の Candi Staton や Barbara Lynn、Irma Thomas。シングル・オンリーなら、Belita Woods や Cynthia & The Imaginations の Cynthia Girty、そしてこの Ty Karim も堪らない。耳朶に絡みつくハスキー・ボイス、狂わせたいのとジンジンしちゃってこまっちゃうのは山本リンダさんだけではありません。いくらビッグなシンガーといえども、Aretha Franklin や Tina Turner があまり好きになれないのは、声に色気を感じないからだ。これは声フェチの私のためにあるような Ty Karim 嬢の奇跡の単独アルバム、UK Kent にはいくら感謝しても感謝したりない。声だけじゃなく、ライナー・ノーツやジャケットではそのお姿も拝見できる。美形、さらに長身でスタイルも抜群ということで、ほっとするやら嬉しいやら。彼女が残した全作品に加え未発表も 10 曲含んだ全 23 曲、のたうちまわるほどの快感の波が襲ってくる。おっといけません、年甲斐も無く興奮、冷静にご案内をさせていただきます。本邦では知名度はゼロに近いレディー・ソウル、私の持論 「ソウルはシングル盤を聴かなきゃお話にならない」 を彼女が身をもって立証してくれる。ノーザンの傑作もてんこ盛り、ディープでコブシのきいた歌いっぷり故、ノーザン・ファンだけでなくディープ・ファンも聴いていただくしかない。私の趣味嗜好は別にしても、楽曲のクオリティーやレアリティーも申し分無く、間違いなく本年では 3 本の指に入るグレートな CD リイシューだ。1947 年にミシシッピで生まれた Ty Karim こと Veatrice Thomas、若い頃は家庭的に恵まれず苦労も多かった。15 歳で結婚、そして離婚。LA に移っていて、Ty が出会ったのが Kent Harris という人物。その後の彼女を公私共に支えたミュージシャンでビジネスマン。5人の子どもをかかえ男やもめであった Kent Harris と Ty は再婚している。この CD に収められた全曲が彼のプロデュースによるものだ。まず、Ty Karim で最も有名で人気のある曲と言ったら、冒頭 1 曲目に収録されている Lighten Up Baby であろう。Car-A-Mel レーベルから 66 年に発表された Ty の 3 枚目のシングル。楽ソウルでも書いたが、実はこれ、あの Darrell Banks の Somebody [Somewhere] Needs Me (Revilot 203) と歌詞は違うが同じ曲。そして、Darrell Banks のオリジナルとなるのが 65 年にリリースされた Ike & Tina Turner の Somebody Needs You (Loma 2015)。Ty のバック・トラックは Ike & Tina のものとほぼいっしょだ。ここでライター・クレジットに注目したい。Loma 盤では Frank Wilson (Revilot 盤では Frank Wilson & Marc Gordon)、Ty Karim のシングルでは Kent Harris となっている。昔から、誰が書いた曲なのか真相が気になっていたが、ライナー・ノーツによれば、Kent Harris のもとでレコード制作に関っていた Jerry Long が Frank Wilson の了解を得て音を拝借したものと推測している。Frank Wilson がプロデュースした Paris のレア・ノーザン Sleepless Nights (Doc 102) のレーベルを見ると彼の名前があり、2 人は仕事で繋がりがあったようだ。Jerry Long は後に Motown のアレンジャーとして活躍しているが、この頃はヤク中でかなりイケナイ人だったらしい。さらに、Lighten Up Baby には Kent Harris の制作で Larry Atkins (Highland 1193) のヴァージョンもあり、Larry Laster の Go For Yourself (Loma 2043) でも Ty のバック・トラックがそのまま使われている。Laster の Loma 盤では Leon Sylvers がライターで Long – Jack プロダクションの表記があり。やんちゃな Jerry さんのおかげで一層こんがらがってしまうが、私の好みでは Ty Karim の歌がベスト。パーカッシブでタイトなバック・サウンドに威勢が良くパワフルなヴォーカルが映えるグレート・ノーザン・クラシックである。なお、Car-A-Mel は Mel Alexander のレーベルで、CD コンピ Kris Records : Los Angeles' Showcase Of Soul (楽p.330) でもこの曲が聴ける。なぜ、リリースが Kent Harris のレーベルではなかったのか疑問だったが、曲を気に入った Mel Alexander が自分が扱ったほうが売れると、Kent Harris の了解を得ずにプレスしたものらしい。話は戻り、Ty Karim のデビュー盤となるのが 10 曲目の You Really Made It Good で、65 年に Kent Harris の Romark レーベルから発表されている。西海岸のヴォーカル・グループ The Incredibles の Cal Waymon & Carl Gilbert が曲を書き、才人 Miles Grayson がアレンジメント。輪を描くようなテンポとリズムのモータウン・ライクなダンサー、弱冠 18 歳とは思えぬほど堂々としたヴォーカル、吐き捨てるようなアクの強い歌いっぷりが実にソウルフルだ。フリップの All At Once は Jerry Long が手掛けた知られざる傑作、彼女の新たな魅力が味わえる。若くして天下の取れそうな声、シックでサッドなバラードに涙が止まりませぬ。私は聴いたことがないが、Cathy & Cookie の Hi Diddle, De Diddle (Bit 71264) という曲と同じバック・トラックが使われている模様、やはり Jerry さんは節操がない。このシングルは Senator 112 としてもリリースがある。Romark の第 2 弾は Chess 初期の Mitty Collier みたいなクラシカルなバラード・ナンバー All In Vain とグレート・ノーザン You Just Don’t Know のカップリング。9 曲目に収録されている You Just Don’t Know は Kent Harris & Larry Jackson の作。Larry Jackson は Kent の妹 Marcene "Dimples” Harris のボーイ・フレンドで、Dimples も Romark にシングル盤を残している。実に楽しいダンス・ナンバーで、よじれるような歌いっぷりが冴え渡り、曲全体に生気がみなぎっている。Lighten Up Baby、そして You Really Made It Good と You Just Don’t Know は Ty Karim のノーザン・ビッグ・スリー。内容ばかりでなくお値段も素敵すぎて高嶺の花、私の憧れのウォンツ・アイテム。悔しいから 3 曲ともリピートで 20 回ぐらい聴いたかな、でも全然飽きませぬ。やっと私も持っているのが 4 枚目のシングル Towana & The Total Destruction名義 (TowanaはTyが最初の結婚でもうけた子供の名前) の Romark 盤。楽ソウルでも紹介したもので、2 曲目と 8 曲目に収録。ここでお詫びしなければいけないことが。楽本では 70 年以降の作じゃないかと書いたが、間違いで 67 年の作。また、両面、歌っているのは Ty Karim だと思い込んでいたが、Wear Your Natural Baby のヴォーカルは違う女性 (訂正あり)。声にこだわっておきながら今まで気が付かなかったとは情けない。渋いヴォーカルがリズミックに舞い上がるダイナミックでパワフルなダンス・ナンバー Help Me Get That Feeling Back Again、しっとりとチャーミングなミッド・バラード Wear Your Natural Baby、ともに文句無しの出来ばえだ。後者は Ty Karim の未発表テイクが 16 曲目に収められているので、聴き比べてもらいたい。イシュー・ヴァージョンで歌っている女性も Ty に負けず劣らずエモーショナル、セクシーで良い声をしてらっしゃる。リリース・ナンバーを順に紹介してきたが、話の都合もあり、ここで素晴しい未発表曲ナンバーについて触れておこう。3 曲目の Ain't That Love Enough は Larry Atkins のシングル (Romark 115、Highland 1193) で有名な曲。デトロイトの向こうを張るような重低音ビートのノーザン・ナンバー、Larry Atkins よりもドラムの音が大きい、荒っぽい歌いっぷりでヴォーカルの勢いはラリーさんよりも上。なお、Larry Atkins の Romark 盤のライター・クレジットは Glen Marchand & Kent Harris となっているが、この曲も Brenda Holloway の未発表ナンバー We’ll Keep On Rolling (A Cellarful Of Motown Volume 3収録) に瓜二つで、そちらは Frank Wilson & Marc Gordon の作となっている。5 枚目のシングルとなるのが 68 年発表の Roach 盤で、レーベルには名前がないが、これも Kent Harris が制作したものだ。11 曲目の I Ain’t Lying は先の Ain’t That Love Enough をさらにアップ・テンポにしたようなかんじ。荒削りなジャンプ・ナンバーで、迫力満点のバック・サウンドを Ty のヴォーカルがかき分け突っ走る。そして、フリップの Only A Fool では、まことにチャーミングなスウィング・ナンバーを聴くことができる。ここでも音の使い回しがあって、 Only A Fool は The Little Wooden Sol-diers / Little Wooden Soldier (Pam-O) と同じバック・トラックが使われているとのこと。Ty Karim と Kent Harris は 71 年に離婚、レコーディングも間が空くが、ビジネス面での 2 人の関係は良好だったようで、それを証明してくれるのが 6 曲目の Lightin’ Up だ。73 年にリリースされた 6 枚目のシングル。Light Up Baby をぐっとモダンなバラッドにアレンジしたもので、楽ソウルでも絶賛。私が最初に出会った Ty Karim、その声に一発で参ってしまった。Ady Croasdell は彼女の声を rich, deep and husky と言っているね、私は sexy と groovy も付け加えたい。このヴォーカルの素晴しさには言葉を失う。ソウル・ファンじゃなきゃ、この曲の強さと深さを真に堪能はできないだろう。フリップの Don't Let Me Lonely Tonight は白人シンガー・ソング・ライター James Taylor の曲、しっとりとブルーに濡れたビート・バラードに仕上がっている。悔しいことに、Ty は 83 年に若くして乳がんで亡くなっており、80 年の Sheridan House 盤がラスト・シングルとなる。12 インチ盤は多く出回ったが、14、15 曲目に収録されているのは珍しいシングル・ヴァージョンだ。残るは未発表ナンバー。Take It Easy Baby は Lighten Up Baby のブルース・ヴァージョン。70 年前後の音かな、Ty も Kent Harris もこの曲にはよほどのこだわりがあったのだろう。同時期の作と思われる Don't Make Me Do Wrong もディープなブルース・ナンバー。I'm Leavin' You はデビュー前のもののよう。どうってことないポップな R&B ナンバーだが、やはり歌は並ではない。After Your Love Has Gone も初期の録音だろう、胸にじわっと沁みる R&B バラード。All At Once と Lighten Up Baby の別テイクが聴けるのも嬉しい。If I Can't Stop You [I Can Slow You Down] と It Takes Money は 80 年ごろの作品。前者は C B Overton (Shock 9) の曲で、Johnny Bristol も 81 年のアルバムで歌っている。以上、全曲コメントさせていただいた。悩ましく狂おしく慈愛に満ちた 69 分間。シングルは僅か 7 枚、彼女が残した曲はけっして多くはないが、その存在感は絶大だ。Ty Karim の奥深い魅力がたっぷり、私にとっては高嶺の花の女性を独り占めにできる CD アルバム。さらに、優しい Ty は私の心を広くさせてくれる。1 人でも多くのソウル・ファンに彼女を知ってもらいたいと、切に願うものであります。
ty karim 1
(訂正)  Towana & The Total Destruction の Wear Your Natural Baby のシングルは、別人ではなく、Ty Karim 本人が歌っているものをピッチを上げてカット、プレスしたもののようです。英語が苦手なので、ライナーの読み間違い等ありましたら、ご指摘よろしくお願いいたします。Tai Curry 様、ありがとうございました。(2009.1.15)
00:43:41 | もっと楽ソウル | コメント(2) | page top↑
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コメント
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Ty Karim。初めて聞く名前でしたが、こちらのブログを読んでCDを購入しました。ほんと、素晴らしいシンガーです。愛聴しております。
CDのライナーを読んで思ったのですが、私も英語が堪能ではないのですが、8曲目の「Wear your Natural, Baby」はTy嬢本人の録音テープをスピードアップしたもの、と書いてあるようです。あと、彼女の死因は肺癌ではなく、乳癌と書いてます。細かいことを突っ込んで申し訳ありません。
by: Thai Curry * 2009/01/14 23:07 * URL [ 編集] | page top↑
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Thai Curry 様、ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。英語は苦手で、冷や汗ものです。今後ともよろしくお願いいたします。
by: sano * 2009/01/16 00:35 * URL [ 編集] | page top↑
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